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化学物質過敏症 ―歴史,疫学と機序―
加藤 貴彦
著者情報
キーワード: 化学物質過敏症,    定義,    歴史,    疫学,    機序
ジャーナル フリー
2018 年 73 巻 1 号 p. 1-8
化学物質過敏症 ―歴史,疫学と機序―
加 藤 貴 彦
熊本大学大学院生命科学研究部公衆衛生学分野
Multiple Chemical Sensitivity (MCS):History, Epidemiology and Mechanism
Takahiko KATOHDepartment of Public Health, Faculty of Life Sciences, Kumamoto University
1.は じ め に
空気質の状態に起因し,シックハウス症候群との関連がいわれている疾患概念として化学物質過敏症がある。
化学物質過敏症の概念のスタートは,1987 年,化学物質に曝露される機会の多い労働者を診察していた Cullenが,過去に大量の化学物質に一度に曝露された後,または長期間慢性的に化学物質の曝露を受けた後,非常に微量の化学物質に再接触した際に見られる不快な臨床症状を,多種化学物質過敏症(Multiple Chemical Sensitivity,以下 MCS)と提唱したことによる (1)。

自覚症状が基本であり,特異的な症状はなく,倦怠感,疲労感,頭痛,関節痛,咽頭痛,筋肉痛,不眠,皮膚炎など多彩な自律神経系や精神神経症状が主体である。
本論文では,化学物質過敏症の定義を含めた歴史,疫学,そして病態に関する知見を整理し,筆者ら自身のデータも含めて考察したい。

内容に関しては,一部,筆者自身のこれまでの著書と報告書の内容を改変して記載している箇所もあるが,引用文献についてはできる限り原著論文を引用している。

また,最初に述べておきたいこととして,次節「2.化学物質過敏症の歴史」で紹介するように,研究者によって化学物質過敏症の定義が異なっている。

そこで,日本の研究については,本論文も含め,総体として化学物質過敏症という用語を使用し,海外の報告についてはそれぞれの研究者が用いている用語で記載することとしたい。