PM2.5の短期曝露で死亡率上昇 | 化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 電磁波過敏症 シックスクール問題を中心としたブログです

・PM2.5の短期曝露で死亡率上昇
東邦大学社会医学講座衛生学分野講師/国立環境研究所環境リスク・健康研究センター客員研究員・道川武紘
 2018年11月02日 06:10 
 記事をクリップする 
〔編集部から〕微小粒子状物質、いわゆるPM2.5の短期暴露で死亡率が上昇するという研究結果が報告された(J Epidemiol10月27日オンライン版)。著者の東邦大学/国立環境研究所の道川武紘氏に解説してもらった。

 微小粒子状物質(PM2.5)は、「大気中に浮かんでいる粒径が2.5μmより小さい粒子」で、大気汚染物質の1つである。

日本では2009年に環境基準が設定されてから、大気環境常時監視測定局における観測が全国に広がったが、これまでPM2.5の健康影響についての国内での疫学分析は十分に行われていなかった。

今回、日本で初めて全国規模でのPM2.5短期曝露(日単位の曝露)による死亡影響評価を実施した1)。

日本でも諸外国同様、PM2.5曝露による死亡リスクの上昇を確認
 2015年国勢調査で人口20万以上だった110都市の中で、2012~14年度にPM2.5観測データがあった100都市を対象とした。

厚生労働省から提供された人口動態調査調査票情報に基づく死亡情報から、死亡日~数日前における各居住都市内にある常時監視測定局でのPM2.5濃度を各個人に割り当てた。

死亡した個人ごとに、死亡日とコントロール日のPM2.5濃度を比較した。

コントロール日は、死亡日と同じ月内での死亡日以外の週の死亡日と同じ曜日とした。

これをケースクロスオーバーデザインと呼び、短期的に変化しない個人要因(年齢、性や既往歴など)を調整できるという長所がある2)。

各都市における死亡当日から前日の平均PM2.5濃度が10μg/m3上昇するごとの死亡増加率を算出した後で、メタ解析を用いて100個の推定値を統合した。

 研究期間中の全都市における1日当たりのPM2.5平均濃度の平均は14.6μg/m3であり、東低西高の傾向を認めた。

都市ごとにPM2.5の短期曝露による死亡増加率にばらつきはあるものの、おおむね一貫した正の関連性が観察されて、統合するとPM2.5濃度が10μg/m3上昇するごとに外因性を除く総死亡が1.3%(95%CI 0.9~1.6%)増加するという結果であった(図)。

また、循環器疾患死亡(ICD‐10、Iコード)と呼吸器疾患死亡(Jコード)とも関連していた。

図. 日本の100都市におけるPM2.5と死亡との関連性に関する統合推定値

(道川武紘氏提供)

 本研究から、これまで諸外国において報告されてきた類似の研究と同様の結果が得られた。特に、PM2.5の濃度レベルが比較的低いとされている日本において、PM2.5の健康影響が認められたことは興味深い。

PM2.5はさまざまな組成の粒子を含む混合物なので、今後は一体どの成分に健康影響があるのか調査し、発生源対策などに生かしていくことを考えている。

※本研究は、環境研究総合推進費5-1751「微小(PM2.5)及び粗大粒子状物質が脳卒中発症や死亡に及ぼす短期曝露影響に関する研究(研究代表者:高見昭憲)」で実施した。