・出典:ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議
http://kokumin-kaigi.org/wp-content/uploads/2018/08/JEPA-news96-web.pdf
・JEPAニュース第96号2015年12月
使っても大丈夫? 柔軟剤・除菌消臭剤
理事 水野玲子
前号の「香りが苦しい―生活空間を汚さないで」に書かれているように、電車の中で隣人の衣服の香料臭が耐えられない、隣家の洗濯物から漂う匂いで体調を崩すという人が増えてきました。
柔軟剤や芳香剤よる身近な空気の汚染が“公害”ではなく“香害”をもたらしているのです。
じつは、柔軟剤には香料以外にも毒性がある化学物質が使われています。
今回は、柔軟性や殺菌性を得るために柔軟剤や除菌消臭剤などに使われている界面活性剤について考えてみましょう。
柔軟剤・除菌消臭剤に使われている共通の成分
「洗濯物がふんわり、やわらかく仕上がります。柔軟剤は衣類の肌ざわり良くし、静電気を防止し殺菌効果もあります」という甘い言葉に誘われ、柔軟剤や柔軟剤入りの洗剤を使用する人も多いのではないでしょうか。
問題は、「ふんわり仕上げ」や「殺菌・除菌効果」を目的に入れられた陽イオン界面活性剤の一つ「第4級アンモニウム塩」*1です。
第4級アンモニウム塩は、吸着性、柔軟性、帯電防止性、殺菌性などの性質があるため、洗濯用の柔軟剤、毛髪用のトリートメント、除菌消臭剤など、身近な製品に使われる化学物質です。
しかし、国際化学物質安全性カード(WHO/IPCS/ILO)によれば、第4級アンモニウム塩の活性剤である塩化ベンザルコニウムは、人への皮膚刺激性や気道刺激性が非常に強く「環境中に放出しないように強く勧告する」とされる物質です。
また、これを含む除菌剤の動物(マウス)実験ではオス・メスの生殖機能に悪影響を及ぼしたとする報告もあります。
除菌消臭スプレーといえば「ファブリーズ」や「リセッシュ」が有名です。
「ファブリーズ」の製造販売元 P&G のホームページでその消臭成分を見ると「トウモロコシ由来消臭 成 分」とあり、除菌成分 は「QUAT(クウォット)」と記載されています。
本来の除菌成分に何が使われているのか曖昧で分かりませんが、渡辺雄二氏の『ファブリーズはいらない―危ない除菌・殺虫・くん煙剤』*2によると、「ファブリーズ」や「トイレその後」などの除菌成分にも第4級アンモニウム塩が入っています。
室内TVOCが除菌消臭スプレーで高まる
第4級アンモニウム塩のような危険な物質を皮膚や衣類につけたり、部屋の中でスプレーしたりして大丈夫なのでしょうか。
室内の TVOC(総揮発性有機化合物)基準は400μg/m3が安全指針とされていますが、渡辺氏の前著によれば「トイレその後」などの消臭剤をスプレーした後は、その成分は空気中に拡散し TVOC はこの基準を超えます。
また別の研究*3では、香りの強い柔軟剤を使用するとTVOC の濃度が高まり、香りの弱い柔軟剤に比べて3~7倍になるそうです。
室内の空気汚染による「シックハウス症候群」に苦しむ人も増えてきました。
必要のない柔軟剤・除菌消臭剤や香料を使った製品の使用を控えましょう。
*1 陰イオン(アニオン)界面活性剤は合成洗剤によく使われ経皮毒性が高い。陽イオン(カチオン)界面活性剤はアミン型と第4級アンモニウム塩型に大別され、後者は反応しやすく毒性が強い。
*2 『ファブリーズはいらない―危ない除菌・殺虫・くん煙剤』渡辺雄二、緑風出版、2009年
*3 神野透人他「柔軟剤の香料による気道刺激に関する研究」(論文)平成25年度室内環境学会学術大会