2:食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度導入を考える | 化学物質過敏症 runのブログ

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欧米等はポジティブリスト制度を採用
 欧米を中心に食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度の導入が始まり、その動きはアジア各国にも広がっています。

アメリカは、1958年から合成樹脂、紙、ゴムについてポジティブリスト制度を採用してきました。EU は、2011年 に「食品接触用プラスチック材料及び製品に関する欧州委員会規則」を公布し、熱硬化性も含めた合成樹脂についてポジティブリスト制度を採用しました。

中国も2016年にポジティブリスト制度を導入し、韓国やタイも制度の導入を検討しているようです。
 日本もこうした各国の動きに遅れてはいけないと、ようやく重い腰をあげました。

ただし、ポジティブリスト制度の手法という観点からは、各国が足並みをそろえているわけではありません。

大きく分けていえば、添加量に基づく制限を採用するアメリカと、溶出量に基づく制限を課す EUとで二分しているといえます。
アメリカは、規格に基づいた添加量で食品用器具や容器包装を設計し、それをFDA に届出すれば、上市するという仕組みを採用しています。
 他方、EU は、ポジティブリストの義務に加えて、表面積1dm2あたり10mg を超える成分が溶出しないよう総溶出量に制限を課しています。

事業者は、実際の製品で溶出試験を行い、食品への総移行量が基準値以下でなければ欧州市場で製造販売することができません。

また、乳幼児への健康影響も考慮し、3歳未満の乳幼児用の材料や製品について、一般の場合とは異なる総移行量制限値を定めています。
 乳幼児や胎児への健康影響を考えれば、有害性の有無が立証されているか否かにかかわらず、できる限り化学物質を体内に取り込まないようにするというEU の仕組みは評価できます。ポジティブリスト制度を導入することを決めた今、日本も、EUと同様に使用実態に即した溶出量規制を採用すべきです。

 

日本のポジティブリストはどうなるか?
しかし、残念ながらこれまでの日本での議論では、ポジティブリストの作成にあたって健康影響の観点が十分に検討されていないようです。

2017年6月16日に公 表された「食品用器具及び容器包装の規制に関する検討会取りまとめ」の中には、業界団体の自主基準で使用が認められているといった一定の要件を満たす場合には、既存物質を引き続き使用できるようにすべきとの記載があります。

人へのばく露を最大限減らすという政策目標を立てないまま、現状維持を優先するということになれば、リスク評価が十分に実施されないままに使用が是認されるおそれがあります。
また、日本では、EU の溶出量規制に適合した証明・分析機関が整備されていないということも指摘されています。

検討会でも、添加量規制の方が管理しやすいのではないかという意見があがっていました。

EUのような溶出量規制を採用することに対して業界は後ろ向きのようです。

さらに、日本は、当面のところ熱可塑性の合成樹脂のみをポジティブリスト制度の対象とする方向で、欧米で対象となっている熱硬化性の合成樹脂についての制度化はいつになるのかわかりません。
 厚生労働省は、食品衛生法改正案を次の通常国会に提出し、可決成立させ、2020年のオリンピック・パラリンピック開催前に改正法を施行することを目指しています。

国際的な遅れを取り戻すための改正というだけではなく、化学物質ばく露から人の健康を守ることを大前提としたポジティブリスト制度を導入することが必要です