・出典:ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議
http://kokumin-kaigi.org/wp-content/uploads/2018/08/JEPA-news109-web.pdf
・食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度導入を考える
理事 粟谷しのぶ
食品衛生法改正の動き
今、スーパーマーケットやコンビニエンスストアには、プラスチック容器に入った色とりどりのお惣菜やお弁当が溢れています。
プラスチック容器やレトルトパックに入った乳幼児向けの食品も数多くあります。
そのほかにもたくさんの食品が様々な容器に入って売られています。
これらの容器には、食品の劣化や雑菌の侵入を防ぎ、消費者の利便性を増すために、様々な化学物質が使われています。
こうした化学物質は食品用器具や容器包装から食品中に溶け出し、私たちは知らぬ間に化学物質を体内に取り込んでいます。
本来、有害な化学物質は、食品用器具や容器包装に使われることのないよう規制されるべきです。
しかし、日本は、毒性が認められた一部の化学物質をリストアップして規格基準を定め、食品用器具や容器包装への含有量や溶出量を基準に制限するというネガティブリスト制度を採用しているため(食品衛生法18条)、規格基準が定められていない化学物質は野放し状態になっているのが現状です。
これに対し、厚生労働省は、食品衛生法を改正し、食品用器具・容器包装に使用する化学物質のポジティブリスト制度を導入しようとしています。
食品用器具・容器包装にポジティブリスト制度を導入すること自体は望ましい方向です。しかし、日本政府の検討状況を見ると、いくつかの問題点が浮き彫りになってきます。
欧米の制度と比較しながら、日本におけるポジティブリスト制度の導入について考えます。
日本の現行制度の問題点
食品用器具や容器包装には、多種多様な化学物質が使用されています。
食品用器具・容器包装から溶出する化学物質の人へのばく露影響を考えれば、リスク評価を実施し、安全性が認められた物質に限定して使用を認めていくことが必要不可欠です。
しかし、日本ではネガティブリスト制度を採用しているため、規格基準がない化学物質は自由に製造販売することができます。
これでは、有害性が疑われている物質や、海外で使用が禁止されている物質であっても、使用を制限することができません。
また、食品用器具・容器包装の溶出試験に関する規格は、約30年大きな改正がなく、電子レンジを使用する際の規格がガラスと陶磁器しかない等、使用実態と試験条件のかい離が指摘されています。
日本では、従来、ポリオレフィン等衛生協議会、塩ビ食品衛生協議会、塩化ビニリデン衛生協議会という三つの協議会が、自主基準として熱可塑性樹脂のポジティブリストを公表してきました。そのため、業界団体が自主的に実施しているという理由で、厚生労働省はポジティブリストの義務化に消極的な姿勢を貫いてきました。
しかし、業界自主基準はあくまでも自主的なルールに過ぎず、拘束力はありません。
協議会に加入していない事業者には影響力が及ばず、海外からの粗悪品を排除することもできません。