(7)漢方とアレルギー性気管支喘息
現代のアレルギー性気管支喘息治療は全てアレルギー性気管支喘息の症状の根本である免疫活動を一時的に抑制するだけですから永遠に治らないことは何度も述べました。
私が発見した治療法は、いかなる自然の免疫の働きは正しい反応ですから抑制しなくても、いずれこの正しい反応も無限に続かなく、自然と終結するので症状の後始末だけをすれば良いということです。
この時に漢方の出番になります。漢方煎剤は症状を簡単に除去してくれます。
漢方煎剤は気管支を拡張するのみならず、免疫を高めて早くIgE抗体を使い切るのに大いに貢献していることは言うまでもありません。
例えば、他のアレルギーのアレルギー性鼻炎・結膜炎や消化管アレルギーの場合も、漢方を飲めばたちどころに様々なアレルギーの症状を除去してくれます。
しかしどんなアレルギーの漢方治療の場合も抑制されていたIgE抗体は必ず上がっていきますから、免疫を抑制しているわけではありません。
にもかかわらず症状が楽になるという点が漢方の偉大さであります。
ところが、この漢方を現代医学は科学することができないのです。
その理由は幾つかあります。まず第一に、現代科学の力では一種類の生薬成分でさえ未だ完全には特定できていないことであります。
(全ての成分を特定することは永遠に不可能でしょう。)
従って、どの成分がどのように薬効を示しているかが全くわからないことであります。
さらには様々な生薬の個々の成分の相互作用を考えると、今盛んに話題となっている複雑系の分野に属する事柄になり、さらに漢方の研究を難しくさせています。
また漢方の経験処方は、必ず二つ以上の生薬から成り立っています。
従って漢方薬の効能は単一の生薬の成分の効能によるものではないことは言うまでも無く、複数の生薬の成分の相加・相乗作用に基づく効果が発揮されていると考えられます。
さらに副作用については逆に相減作用が働いていると考えられます。
現代医学は単一の成分だけを用いるのが原則でありますが、漢方では単一の成分を用いるよりも複数の成分を併用することが、遥かに薬効を発揮でき、さらには副作用も軽減できることが経験的に分かっているのです。
ここが現代西洋医学の要素還元主義的な薬の用い方とは異なり、漢方薬が複数の生薬を用いる所以であります。
他方、現代医学は漢方の考え方とは違って、薬の相加・相乗・相減作用などをはなから認めようとしません。
認め始めると現代医学が成り立たなくなるためです。
逆に西洋医学の薬は併用することによって副作用が出ることがしばしば問題になります。
このような意味においても、漢方と西洋医学とは土俵が違うわけであります。
古来から病気の大部分は見かけ上炎症という症状で現れます。
この見かけ上の炎症を除去すれば結果として病気は治るということを、漢方を作った古代中国人は知っていました。
勿論、免疫や抗体やウィルスや細菌などについては目に見えないものですから全く知らなかったわけですが、その代わりにいかにして患者の症状を楽にしてあげようかと努力を注いだのです。
そしてまさにこの炎症から生じる症状を改善することの出来る草根木皮を探し尽くしたわけです。
しかし炎症といってもいろいろあります。
一番代表的な炎症は感染症によるものです。
これについては細菌に対しては抗生物質により一応根本的に征服されたと考えられています。
( しかし最近の大腸菌によるO-157 騒ぎはまだまだ細菌も手強い敵でありつづけているようです。)
つぎにウイルスでありますがエイズウイルスでわかりますようにエイズウィルスそのものを殺すのにまだまだ時間がかかるようです。
いずれにしろ漢方は結果的に人間自身が固有に持っている免疫力を上げることで対応し、さらに病人の症状だけをできるかぎり楽にしてあげようとした努力が漢方経験処方として私達に伝えられてきたのであります。
ここであらためて私が考案した漢方煎剤が免疫を抑制しないことを詳しく説明しておきたいと思います。
勿論いろいろと説明の仕方はありますが、言わば毎日毎日臨床免疫学をしていると言える開業医としての私の立場から一つの答えを出しておきます。
免疫抑制剤の代表であるステロイド剤は使えば使うほどIgE抗体の産生を抑制することができます。
IgE抗体をゼロにすることもできるのであります。
例えば、アレルギー患者に毎日毎日ステロイドを注射するとか、ステロイド内服剤を毎日毎日大量に服用させれば理論的にはIgE抗体はゼロになってしまいます。
ところが、そのステロイドを止めると急激に(ときには徐々に)IgE抗体の産生が始まり、抑制されたIgE抗体がどんどん上昇していきます。
と同時に症状がどんどん激しくなっていきます。
こんなときに再び症状を一時的に楽にする為にステロイドを用いると、症状も良くなると同時に再びIgE抗体が下がっていきます。
これがステロイドの免疫の抑制の意味であり、基本的には現代医学のアレルギーの治療で行われていることであります。