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018年7月19日
コラム
自分の病名も薬の名前も知らない…患者が賢くならなければいけない理由
眼科の中でも、私の専門とする神経眼科や心療眼科は、全身病との関連や全身薬の影響を考えなければならないことが多くなります。
高血圧、糖尿病などの循環系の病気と眼球の病気、甲状腺などの内分泌の病気と神経眼科の病気は、それぞれ関連性が高いのです。
また、精神科、心療内科、神経内科に関わる病状や使用されている薬も、目の機能に関係が深いものです。
「先生にお任せしていますから」「聞いてもどうせわかりません」
そのため、私は患者に「いまどういう薬を服用していますか」「過去にはどんな薬を服用していましたか」と尋ねることがあります。
すぐに薬の名前が出てくる人、おくすり手帳を差し出す「優等生」もいます。
その一方で、以下のように、要領を得ない答えを返してくる人が意外と多いのです。
「高血圧の薬、胃の薬、それにあといろいろもらっています」
「先生にお任せしていますからよく知りません」
さらに、病名さえ知らないまま、処方された薬を服用している人がかなりいます。
「聞いてもどうせわかりません」
「聞いても教えてくれません」
そのような言葉を聞くと、いささかあきれてしまいます。
抗がん剤の影響か…8年以上前の手術、カルテは保存されておらず
先日、48歳の女性が私の外来に来ました。この年齢にふさわしくないほど、老視が進んでいるようでした。
彼女の話を聞くと。原因となるようなケガや、病気はないように見えましたが、「41歳のときに乳がんの手術を受けた後、副作用の強い抗がん剤を使った」という説明が気になりました。
私は、「老眼が進行している原因のひとつに、抗がん剤が関係しているかもしれない」と思いました。
しかし、どの抗がん剤を使ったのか、ご本人は知りません。
手術は8年以上前なので、カルテは保存されていませんでした。
医師法では、カルテの保存期間は5年です。
このため、彼女の症状の原因を突き止めることはできませんでした。
自分の健康や病気は、自分に責任…「患者目線の医療」への遠い道
以前のコラムで、日本の医療システムは、国と医師会などとの話し合いで決められてきたから、患者目線になっていない部分があることを指摘しました( 【患者学(4)】誰でも患者になる…日本の医療システム作りに欠かせない視点 )。
カルテの保存期間が5年と短いのも、そうした背景があるからだと思います。
もし、患者が何となく医師に遠慮して、診察室で質問することや、自分の思いを述べたりすることを 躊躇ちゅうちょ する傾向にあるとすれば、そのままでよしとしてはいけません。
自分の健康や病気は、一人ひとりにとって高い関心事であると同時に、結局は個々が責任を持つものだからです。
カルテ保存については患者から見れば、手術や治療から5年たったらその情報が不要になるからというのでなく、他の理由でできたルールだろうと思います。
自分の手術・治療歴をいつでも確認できるシステム作りが必要ではないでしょうか。
患者が、自分の健康問題をすべて医師に丸投げして、自分の病名も服用している薬の名前すらも知らないといったことでは、「患者目線の医療」は実現するわけがないと思います。
(若倉雅登 井上眼科病院名誉院長)
runより:患者が一番情報を持っていると自覚する事が大事です。
専門医であっても丸投げしてはよくないですね、症状などメモして持っていくと専門医も色々見えてくるんですから。