3:汗の季節に消臭・芳香商品で「香害加害者」にならない方法 | 化学物質過敏症 runのブログ

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ただし、消臭力はあまり強くないので、香料を配合し、消しきれないニオイをごまかしている(これをマスキングという)。

 次の「除菌成分Quat」は、「第4級アンモニウム化合物」と呼ばれる化学物質のグループのことだ(注5)。

 ファブリーズは、それらのうち最も毒性が強い「塩化ベンザルコニウム」など2種類を含んでいることが明らかになっている。

 第4級アンモニウムは細菌の細胞膜を不安定にして細胞を殺す性質をもっており、このため殺菌剤をはじめ抗菌剤・消毒薬、洗浄剤(洗剤やシャンプー)、食品保存剤などに広く使用されている。

 ただし、人の細胞膜も不安定にするから、これが配合された「薬用石けん(逆性石けん)」を多用する医療従事者は皮膚炎やぜんそくになることがある。

またアレルギーを起こしやすいため、医薬部外品に使うときは必ず表示しなければならない。

 さらに、コンタクトレンズ用薬品に防腐剤として含まれ、角膜障害を起こすことがあり、麻酔時の筋弛緩剤として使われてアナフィラキシーショックを起こしたこともある。

注3 大手3社の消臭除菌スプレーでは、「HYGIA 衣類・布製品の除菌・消臭スプレー」(ライオン)が「界面活性剤・除菌剤」として「ジアルキルジメチルアンモニウム塩」と明記している。

これは第4級アンモニウムの1つで、毒性は塩化ベンザルコニウムより低いとされている(殺菌力も弱い)。
注4 記載されていないが、シクロデキストリンの分子をつなぐ架橋剤として、イソシアネートという毒性のきわめて強い物質が使用されている可能性がある。
注5 英語ではquaternary ammonium compounds。第4級アンモニウムは、毒性が強い「陽イオン系」の界面活性剤でもある。
第4級アンモニウムで最も毒性の強い塩化ベンザルコニウムは、GHS分類では「危険」のランクだ。

 

具体的には、吸入すると生命に危険・重篤な皮膚の薬傷および眼の損傷・アレルギー性皮膚反応を起こす恐れ・生殖能または胎児への悪影響の恐れの疑い・水生生物への非常に強い毒性などの有害性がある。

 このためシンボルマークは(強い急性毒性を示す)「ドクロ」「腐食性あり」「健康有害性あり」「環境有害性あり」の4つを付ける。「環境中への放出を避けること」との注意書もついている。

 政府がPRTR法の第一種指定化学物質に指定している物質でもある。

 

乳幼児や妊婦のいるところでは特に注意が必要だ
 塩化ベンザルコニウムなどQuatについては近年、新たな毒性が次々に明らかになっている。

 例えば、生まれたばかりの仔マウスにファブリーズの原液を希釈して投与すると、死亡率が高まったとの研究結果が、東京都健康安全研究センターから発表されている。

 ソファやぬいぐるみに残ったファブリーズの成分を、乳幼児がなめる場合などを想定しての研究だと考えられる。

 またアメリカ・バージニア工科大学などのグループは2015年、Quatに暴露したマウスではオスの精子が減少し、メスの排卵が少なくなるなど繁殖力が落ちるという報告を出した。

 さらに昨年7月には、Quatに暴露したマウスから生まれた仔マウスは、二分脊椎症や無脳症といった「先天性異常(欠損)」が多いと発表している(注6)。

注6 二分脊椎症は、脊椎の骨が脊髄の神経組織を覆っていないため、神経組織が正常に働かず、下肢の運動障害などが起きる先天性異常。無脳症は、脳が十分に形成されず、多くは流産や死産となる。
こうした研究を踏まえ、アメリカのNGO「地球のための女性の声」はサイトに「”Quats”とは何か、なぜ問題なのか?」という解説を載せ、「QUIT the Quats(クウォットを使うのをやめよう)」と呼びかけている。

消臭除菌スプレーは、以上のような成分をスーツからカーペットまであらゆるものに吹きかける商品であり、使えば「香害」の原因になる恐れがある。

 乳幼児や妊婦のいるところでは使うべきではないし、若いカップルがスプレーし合うのも、車のエアコンに取りつけて車内に成分を充満させるのもやめた方がいい。

自身が健康被害を受けないためにも不便でも「ひと手間かけた生活」を
 この機会に、「香害」の加害者になる可能性がない生活に切り替えることをお勧めする――。

 例えば、体や髪を洗ったり洗濯したりするときは、合成洗剤や柔軟剤を使わず、香料・着色料・酸化防止剤などを含まない石けんのボディソープ・シャンプー・洗剤を使う。

 また、消臭スプレーや汗拭きシートは使わず、汗はハンカチやおしぼりでぬぐい、必要なら着替え用の下着を持参して通勤する。

 そうした「ひと手間かけた生活」は、香害被害者を助けるだけでなく、あなた自身の健康にとっても良い影響をもたらす。

(ジャーナリスト 岡田幹治)