・出典:ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議
ニュースレター第107号2017年10月
http://kokumin-kaigi.org/wp-content/uploads/2018/02/JEPA106_web.pdf
“空騒ぎ”ではなかった環境ホルモン(内分泌かく乱物質)最新情報2017
精子数減少はもはや負のスパイラル
理事 水野玲子
「過去50年間で精子数が半減」、このショッキングなニュースを英国BBC が放映したのは1992年のことでした。
平均1億1300万個もあった精子数が、その約半分の6600万近くになったというのです。
皆さんもご承知のように、このニュースは「精子数減少によって人類滅亡か」という恐怖感を私たちに煽り、わが国でも環境ホルモン問題が大きく報道されました。
その後、専門家により精子数研究のサンプルサイズや測定方法など、調査方法の信ぴょう性について喧々諤々(けんけんがくがく)の議論が戦わされてきました。
あれから早くも25年が経過しましたが、その後、この問題はどうなったのでしょうか。
この間、わが国では精子減少の問題はほとんど話題にも上りませんでしたが、欧米では引き続き熱心な議論が繰り広げられてきました。
そして2017年、精子数に関する非常に重要な論文が二つ発表されたのです。
それによれば、男性の生殖機能の低下は、もはや食い止められない負のスパイラルの段階に入っていることが明らかになったのです。
やはり、環境ホルモンは“空騒ぎ”ではなく現実の問題だったのです。
以下、ふたつの重要論文を簡単に紹介しましょう。
欧米男性の精子数40年間に50%以上減少2017年7月27日CNN ニュースは、北米、欧州、豪州に住む男性の精子数は近年減少の一途をたどり、40年前より50%以上減少したと報じました。生殖問題に関する医学専門雑誌(Human Reproduction)に精子数減少に関する過去の研究の総合的レビューが発表されたのです。
この論文は、1981年から2013年までの約30年間に発表された精子数に関する185研究のメタ解析で、膨大な研究結果を再評価したものです。
この調査の対象となった男性は、とくに生殖能力ある・なし(子どもがいる・いない)という条件で選別したのではなく一般の男性であり、精子提供者の合計は4万2935人に上りました。
精子数は50年前には1ml 当たり約1億個が普通でしたが近年減少し、2010年の WHO 基準では正常参考値が1500万以上と改訂されました。
現在では一般的に、精子数が1500万を下回ると不妊の原因になり、5500万を下回ると受胎率に影響するとされています。
今回の研究では、北米、欧州、豪州などで1973年から2011年の間に精子濃度(1ml あたりの精子数)は毎年1.4% 減少し、全体では52.4% 減少しており、多くの欧米男性の精子数が受胎率に影響する4000万以下だったのです。
過 去 の 精 子 研 究、Carlsen やSkakkebaek(1992年)、Swan(1999年)らの結果では、それまでの50年間で精子数は半減し、毎年93万~94万個 /ml 減少していると報告されました。
それに比べると今回の結果は減少傾向が緩やかでしたが、精子数が大幅に減少していることはもはや疑う余地もない事実となったのです。
今回の調査結果について、Skakkebaek は「デンマーク人男性の20%以上はすでに生殖能力がない」とコメントし、また環境ホルモン研究の第一人者であるvom Saal は、「男性不妊の負のスパイラルは、もはや食い止められない」とあらためて警鐘を鳴らしたのです。