・出典:ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議
ニュースレター第107号2017年10月
http://kokumin-kaigi.org/wp-content/uploads/2018/04/JEPA_news-107.pdf
・イソシアネートも化学物質過敏症(CS)の一因に ―被害者から学ぶ
去る10月3日国民会議では、社会的に危険性がまだ認知されていない毒性物質イソシアネートについての理解を深めるために、被害者の伊藤香さんからお話を聞く会を弁護士会館にて開催しました。
また同時に、伊藤さんの住宅からイソシアネートを検出した化学物質評価研究機構(CERI)東京事業所環境技術部の和田丈晴さんにもお越しいただき、測定の詳しい説明をお聞きしました。
フロアマニキュアの剥離作業の事故で重症のCSに
都内にお住いの伊藤香さんは、2012年、自宅のフローリングのフロアマニキュア剥離作業で、強力な剥離剤(労働安全衛生法通知対象物質のトリエタノールアミンや2013年EU 指令アレルゲンリストに掲載されたベンジルアルコールなどを含む)が使用され、施工業者とともに思ってもみない健康被害にあってしまいました。
剥離剤の個々の成分はイソシアネート類に比べてそれほど高くなくても、何種類もの有害物質を同時に使用したことによる複合影響は甚大なものでした。
剥離作業の直後から飼い猫はぐったりして夜中には血を吐いてしまいました。
伊藤さんは作業直後から目が真っ赤に充血してしまい、昼には頭痛と喉の痛みと吐き気とめまいで病院で点滴治療となり、夕方には、手足がしびれてしまい、背中も痛くて歩けなくなり病院に搬送されました。
その後2か月近く身動きすることすらできなくなったのです。
それまで CSとは無縁だった伊藤さんは、アレルギーもなく多少強い香料などでも全く平気でした。しかし、その事故の後からあらゆる微量の人工化学物質や電磁波にも反応する重症の CS の身体になってしまいました。
まもなく自宅から避難した伊藤さんは、業者が手配したホテルを転々とし、同年12月に仮住まいとなるマンション桜レジデンスに引っ越しました。
しかし、そこでイソシアネートにばく露したのです。
引っ越しの前日に、床に傷がつかないようにと大家さんの指示でフロアーコーテイング剤(アクリルウレタンが入っている製品)が施工されていました。
年末の29日の引っ越しの夜、床暖房のスイッチを入れた直後にすごい異臭がして、喉が痛くなり、吐き気と頭痛で寝込んでしまいました。
猫もぐったりしてしまったので、香さんは不安になりすぐに転居したいと業者に言いましたが、空気測定の結果が出るまで待って欲しいと言われました。
そこに居住した約1か月間は喉の痛みと咳が続き、痰は透明から緑色の炎症性のものになり、とにかく日を追うごとに咳や痰がひどくなり、息苦しくて眠れなくなりました。
胸がとても痛くて病院でレントゲンを撮ると肋骨はひどい咳で折れており、その痛みで横になるのもつらくて2週間は全然寝ることができなかったのです。
その後転々と、安心して暮らせる住居を探して移動し、2016年秋、床や壁などを自然素材で改修工事した自宅にようやく戻ることができたのです。