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【「香害」最前線】 ファブリーズ
除菌成分「QAUT」に新たな毒性
岡田幹治|2017年12月1日4:28PM
テレビコマーシャルなどですっかりお馴染みの除菌消臭スプレー。
実は毒性が次々に明らかになっている。
これらを使わなくても、子どもやペットに安心な重曹やクエン酸を使う方法も!
※このシリーズは問答形式にしました
――P&Gジャパンの消臭除菌スプレー「ファブリーズ」の除菌成分「QUAT」に新たな毒性が明らかになったと聞きました。そもそもQUATって何ですか。
P&Gのウェブサイトには「特定の除菌成分の総称です」とありますが、「第4級アンモニウム化合物」のことです(注1)。
ファブリーズは、それらのうち界面活性剤として商業利用されている「塩化ベンザルコニウム」など2種類のQUATを含むとされています。
――QUATについてP&Gは「このタイプの除菌成分の安全性は広く認められており、化粧品や薬用石けんなどに使用されています」と書いています。
第4級アンモニウムは細菌の細胞膜を不安定にして細胞を殺す性質をもっており、このため殺菌剤をはじめ抗菌剤・消毒薬、洗浄剤(洗剤やシャンプー)、食品保存剤などに広く使用されています。
人の細胞膜も不安定にしますから、人にも健康被害をもたらします。
殺菌力が強い「逆性石けん(薬用石けん)」を多用する医療従事者は皮膚炎を起こし、喘息の原因にもなります(注2)。
またアレルギーを起こしやすいため、医薬部外品に使うときは必ず表示しなければなりません。
この物質は、コンタクトレンズ用液に防腐剤として含まれ、角膜障害を起こすことがあるし、麻酔時の筋弛緩剤として使われてアナフィラキシーショックの原因にもなっています。
なかでも塩化ベンザルコニウムは人の眼・皮膚・気道への刺激性が非常に強く、国際化学物質安全性カード(ICSC)で「環境中に放出しないよう強く勧告する」とされています(注3)。
国内では、生まれたばかりの仔マウスにファブリーズの原液を希釈して投与すると死亡率が高まるとの研究結果が公表されています(注4)。
これはソファやぬいぐるみに溜まったファブリーズの成分を乳幼児がなめる場合などを想定しての研究です。
――そうした危険性に加え、アメリカ・バージニア工科大学のテリー・フルベック教授らが新たな毒性を明らかにしたのですね。
研究を始めたきっかけは、研究室の飼育かごの洗浄剤をQUAT含有のものに変更したとたんにマウスの出産率が低下したことです。
驚いた博士らはまず生殖毒性について調べ、QUATに曝露したメスマウスは出産数が少ないことを2014年に発表。
15年には、QUATに曝露したマウスでは、オスの精子が減少し、メスの排卵が少なくなるなど繁殖力が落ちることを報告しています。
続いて今年7月、QUATに曝露させたマウスから生まれた仔マウスは、二分脊椎症や無脳症といった「先天性異常(欠損)」(注5)が多いと発表しました(注6)。
教授らは、塩化ベンザルコニウムと塩化ジデシルジメチルアンモニウムという2種類のQUATを用い、それらを「餌に入れて食べさせる」「チューブを通して服用させる」「それらを含む消毒薬を飼育室で使う」という三つの方法で曝露させた結果、次のことがわかりました――。
①曝露されたオスとメスのマウスから生まれた仔は先天性異常の比率が高く、その現象は曝露をやめた後、2世代にわたって引き継がれた。
②オスだけに曝露させ、メスには曝露させなかった場合でも、仔の先天性異常の割合は高かった。
③QUAT含有の消毒薬を飼育室で使った場合でも同じ現象が見られ、先天性異常の発生率は別の消毒薬では0・1%なのに、QUAT含有の消毒薬では15%にもなった。