・被ばくによる人間への影響
経口摂取しなくとも中毒症状が発現したことが知られている。イスラエルのベングリオン大学プッシュノイらのグループは、農業労働者で除草剤グリホサート(ラウンドアップ)被ばく後に中毒性肺炎になった症例を報告している(Pushnoy and Avon 1988)。
米国カリフォルニア州は、農薬による労働者の健康障害を報告している。
この報告中で、グリホサートによって全身中毒や皮膚障害・眼障害が起こることが報告されている(Calfornia Department of Pesticide Regulation 1999)。
不活性成分の毒性
ラウンドアップは有効成分グリホサートと界面活性剤ポリオキシエチレンアミンを含む。界面活性剤の毒性はグリホサートの毒性より強いことが知られている。
グリホサートやポリオキシエチレンアミン、ラウンドアップの毒性を、ラットの気管内投与や経口投与して毒性を調べた研究では、グリホサート自体より、ポリオキシエチレンアミン自体及びポリオキシエチレンアミンを含むラウンドアップの毒性が強かった(Adam et al. 1997)。
アレルギー・過敏性
グリフォサートは光刺激皮膚炎やアレルギー性皮膚炎、光 ア レ ル ギ ー 性 皮膚炎 を起 こ さ な い と さ れ て い た が(Maibach 1986)、皮膚傷害などが現れた症例が報告されている(Calfornia Department of Pesticide Regulation 1999)。
ラウンドアップ使用後に、発熱や皮疹・全身倦怠感・食欲不振が現れて入院し、その後手足に紫斑を伴う浸潤性紅斑が現れ、一部潰瘍化した例が報告されている。
この症例は過敏性血管炎と診断された(朝日他, 2000)。
Penagos et al. (2004)はパナマのバナナプランテーション労働者で農薬に対する刺激性やアレルギー性の接触皮膚炎を調べた。
労働者 37 人でパッチテストの結果、カルバリル(=NAC、5 人)やベノミル(4 人)などでアレルギー性接触皮膚炎が認められ、皮膚炎を起こさないとされていたグリホサートでも 2 人で陽性反応が認められた。
日本では、佐久総合病院皮膚科の Horiuchi et al. (2008)の報告によるとこれまでの皮膚傷害を起こしやすい農薬や有機リン剤使用が減少し、1975 年から 2000 年に次第に減少してきたが、この時期にグリホサートなどの刺激性農薬による化学熱傷が増加してきたという。
生殖への影響
精子への影響
エジプトのアレクサンドリア大学ヨウセフらのグループはウサギの精液に対するグリホサートの影響を調べている。
成熟した雄ウサギに致死量以下のグリホサートを投与すると、体重減少や性欲、射精量、精子濃度、精液のフラクトース量と浸透圧などの減少を招いた。
この場合異常な精子や死んだ精子が増加した。精液に対する影響は回復期にも続くことがわかった。
精子に対する影響はグリホサートの直接的な細胞毒性か、内分泌系によるものであろうと、研究グループは推定した(Yousef et al. 1995)。
次に述べるようにラウンドアップ(グリホサート+界面活性剤)は性ホルモン合成に影響を及ぼすことが知られている(Walsh et al. 2000)。