2: 有機燐:ジメトエート | 化学物質過敏症 runのブログ

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・急性中毒
 
● ジメトエート中毒症状は他の有機燐殺虫剤と似ているが、臨床像はずっと遅れて現れる [1]。
 
● 経口や吸入・皮膚吸収によって中程度に有毒である [2]。
 
● ラットの急性経口LD50は工業製品で180から330 mg/kgの範囲である。

28から30 mg/kgの低い経口LD50が報告されているが、現在の製品の毒性を余り反映していないと一部の人は見なしている [2]。
 
● ほかの種の経口LD50値は、マウスで160 mg/kg、ウサギで400-500 mg/kgである。

テンジクネズミで、経口毒性は試薬等級で550から600 mg/kgと報告されているが、工業等級は350から400 mg/kgと毒性が強い。

この毒性の増加は工業製品中に最初に存在した不純物によるのか、時間の経過による分解で生じたものによるのか明らかでない [2]。
 
● 吸入経路を通じて、報告されている4時間LC50は 2.0 mg/Lより大きく、わずかな毒性を示している [2]。
 
● ジメトエートの経皮LD50値は100から600 mg/kgである [2]。
 
● 急性被ばく症状:急性被ばくの影響は有機燐に典型的なものである。

有機燐あるいはコリンエステラーゼ阻害化合物に対する急性被ばく症状には次のものがある。
 
○ しびれ、ひりひりする感覚、(体の)協調不能、頭痛、めまい、震え、吐き気、腹部のけいれん、発汗、ぼんやりした視覚、呼吸困難、呼吸抑制、遅い心拍 [2]。
 
○ 非常に高い量では意識消失や失禁、けいれん、死亡を招く [2]。
 
○ 呼吸疾患のある人や最近コリンエステラーゼ阻害剤に対する被ばくした人、コリンエステラーゼ生産が損なわれている人、あるいは肝機能不全の人は、ジメトエート被ばくによる危険が増加する [2]。
 
● ジメトエートは実験動物で皮膚と眼を刺激しないという [2]。

重度の眼刺激がジメトエートを製造している労働者で起こっているが、このことは不純物によるのかもしれない [2]。
 
● 多臓器不全:自殺目的でジメトエートを飲んで多臓器不全になった例がある。

この68才男性は一時的に改善を見たが、成人型呼吸障害症候群と急性腎不全のために次第に悪化した。この患者は心原性肺水腫と尿細管壊死が発生したことが検査で分かった。

様々な治療が施されたが入院12日で死亡した。

剖検で呼吸障害症候群と急性尿細管壊死が確認された [3]。
 
● 中間症候群*:ジメトエートは中間症候群を起こすことがある。

ジメトエート中毒女性にやや重いコリン作動性の発作が起こったが、アトロピンによって容易に治療できた。

中毒兆候がなかったほぼ2日間後、突然命にかかわる呼吸麻痺を起こし、顔面筋や外眼筋、首の屈筋、四肢の近位筋の脱力が現れた。

ムスカリン性兆候はなかった。

この場合、コリンエステラーゼ阻害は強かった。

この臨床経過は中間症候群と一致する。この症状は持続的なコリンエステラーゼ阻害によるもので、神経筋伝達のシナプス前とシナプス後の両方の障害を起こすと思われる [4]。
 
 
慢性毒性
 
● 有機燐に対するくり返しあるいは長期被ばくは、急性被ばくと同じ影響を招くだろう。

くり返し被ばくした労働者で報告されたその他の影響には、記憶と集中の障害や方向感覚喪失、重度の抑うつ、易興奮性、錯乱、頭痛、会話困難、反応時間の遅れ、悪夢、夢遊病、嗜眠あるいは不眠がある。

頭痛と吐き気、食欲喪失、けん怠を伴うインフルエンザ様症状も報告されている [2]。
 
● 21日間18 mg (0.26 mg/kg/日)のジメトエートを飲んだ成人男性でコリンエステラーゼ阻害はなかった。 

有毒な影響とコリンエステラーゼ阻害は、4週間2.5 mg/日 (約0.04 mg/kg/日)を飲んだ人で観察されなかった。

5、15、30、45、60 mg/kg/日を57日間経口投与された人間の研究で、コリンエステラーゼ阻害は30 mg/kg以上のグループでのみ観察された [2]。
 
 
器官毒性
 
● 神経系への影響
 
 
○ ジメトエート中毒9日後に死亡した患者では異常な中枢神経障害が見られた。

病理学所見はウエルニッケ脳症*に類似し、重度の脳室*壁の出血性壊死が見られた。

報告者によると、脳内アセチルコリンレベルの上昇がウエルニッケ脳症チアミン欠乏を招いたという [1]。
 
○ ジメトエートと重金属の鉛は、神経系に対する影響を強めあうことが知られている。

妊娠5-15日及び授乳2-28日の間親ラットに、あるいは妊娠5-28日及び授乳2-28日の親ラットと離乳後8週間子ラットに、鉛 (80.0 又は320.0 mg/kg)、ジメトエート(7.0 又は 28.0 mg/kg)、又はその組合せを投与した。子ラットの電気生理学的検査を12週令で行った。

この結果、皮質脳波の有意な平均振幅の減少と頻度の増加、体制感覚や視覚・聴覚誘発電位の潜時と持続期間の延長がみられ、鉛やジメトエートを別々に投与した群より、両方を投与した群でより顕著であった。

この結果は出生前後に鉛とジメトエートのような神経毒物に被ばくすると、中枢神経系の機能を大きく変えることを示している [8]。
 
○ 行動への影響:ジメトエートは動物の行動に障害を与える。

ジメトエートの行動とコリンエステラーゼへの影響をモリアカネズミで調べた実験では、投与短時間後、活発さが低下し、毛づくろいや立ち上がり、臭いかぎの減少が特徴であった薬量依存性の行動抑制があった。

行動障害は投与6時間後に完全に消失した。

高い2つの投与量で、常動的で脅迫的な毛づくろいが投与30分後に見られた。

ジメトエート被ばく後脳と血清中の薬量依存性のChE活性低下が見られた。

行動障害は65-75%(脳)と75-85%(血清)のChE阻害と最大レベルと関連していた。

ChE活性の回復は行動障害の回復より遅れ、投与後3-6時間後に始まった [9]。
 
○ 学習への影響:24.75 又は 49.5 mg/kg (LD50の1/10又は1/5th)のジメトエートを投与すると、学習と記憶保持に障害が現れる [12]。
 
○ 多世代投与の影響:多世代に渡ってジメトエートを投与し、神経系や行動への影響を調べた研究がある。

ラットに 7.0, 10.5, 14.0, 28.0 mg/kg (LD50の1/100、1/75、1/50、1/25)のジメトエートを妊娠中と授乳中、成熟時期を通じ、三世代に渡って投与し、脳波の変化を追跡した研究がある。

脳波の測定は12-13週例に行った。

投与したラットの全般的な脳は活動は対照より大きくなった。

平均周波数は高くなり、振幅は減少した。これらの影響は第三世代で最も顕著になった [10]。

同様にラットにジメトエートを三世代投与して体性感覚や視覚、聴覚によって誘発される電位を調べた研究があるが、この場合、世代間でジメトエートの影響に差はなかった [11]。
 
 
● 自律神経系への影響
 
○ スデック症候群*は、手足の疼痛や皮膚の浮腫、骨の脱灰、血管運動の不安定などを示す病気である。

一般に外傷や関節炎の後に現れるといわれる。トルコのオンドクズマイイス大学のサヒンらのグループは、ジメトエート中毒後にスデック症候群が現れた患者を報告している [12]。