5:有機燐:クロルピリホス | 化学物質過敏症 runのブログ

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・年齢 ・性による感受性の差
 
 ・ 生まれたばかりのブタの尾と臍に2.5%クロルピリホスを含むアエロゾル製品を吹き付けた。ブタの新生児の死亡は、生後0-3時間後に処理した場合7/7、24-30時間で3/5、30-36時間後で0/3であった。

臨床症状は有機燐中毒を示し、血液と脳のコリンエステラーゼ活性は低下していた。

このことは生後1日以下のブタの子に対するクロルピリホスの経皮毒性は強いことを示している[3]。

この例では生まれた直後が一番過敏であり、徐々に毒性影響が少なくなることが分かる。
 
 ・ クロルピリホスは、大人より子供で毒性が強いことが知られている。

このことは幼い動物でクロルピリホスオクソナーゼ活性が低いことによる可能性を調べるため、生後4日と成熟したラット(90日)の脳 ・血漿 ・肝臓のクロルピリホスオクソナーゼ活性を調べた。

幼いおよび成熟したラットの脳に活性はなかった。血漿と肝臓の活性は、幼いラットで顕著に低く、それぞれ大人の1/11と1/2であった。

このことはクロルピリホスオクソンを解毒する能力が低いことを示している[9]。
 
 ・ 幼弱な動物はコリンエステラーゼを阻害する農薬の致死的影響に敏感であることが知られているが、致死的影響以外のデータは少ない。

1998年、米環境保護庁のマサーとパディラは、クロルピリホスによる行動と生化学的影響の年齢差(生後17日と約70日)と性差を報告している。

ほぼ同じ程度にコリンエステラーゼを阻害するクロルピリホスを投与した(幼いラット15 mg/kg、成熟ラット80 mg/kg)。投与1-336時間後に組織を取り出した。

成熟雄ラットでは行動変化とコリンエステラーゼ阻害のピークは、投与3.5時間後であったが、雌ではこの変化はより早く現れ、回復は遅かった。幼いラットでは、行動とコリンエステラーゼ阻害のピークは投与6.5時間後で、性差はなかった。行動変化は24時間から72時間で部分的回復や完全回復を示したが、脳と血液中のコリンエステラーゼ活性の活性は、投与後1週間を要した。成熟ラットのコリンエステラーゼ活性は2週間でも回復しない。ムスカリン性受容体結合は幼弱ラットで24時間と72時間で成熟ラットより低下した。以上から次の結論を導いた。(1)幼弱ラットは5倍低い投与量で大人と同じ様な行動変化とコリンエステラーゼ阻害を示す。(2)最大の影響が表れるのは幼弱ラットでやや遅れる。(3)

コリンエステラーゼ活性は幼弱ラットで回復が早い傾向がある。(4)

幼弱ラットはムスカリン性受容体がより広汎に低下する。(5)幼いラットは性差を示さない[11]。これに対して影響には性差があるという報告がある[14]。
 
 
 
発癌性
 
 ・ 米環境保護庁はクロルピリホスに発癌性はないとしていたが[1]、最近の疫学研究では肺癌との関係が示されている。
 
 ・ 米国衛生研究所 NIH の癌疫学遺伝学部の職業環境疫学部門のリーらのグループは、アイオワ州とノースカロリナ州で行われている農薬使用免許を持つ約54,000人の集団でクロルピリホスと発癌との関係を調べた。[18]
 
  クロルピリホス使用と全ての癌を合計した癌発生率との間には差がなかったが、クロルピリホス被ばくと肺癌の発生率との間に統計的に有意な関係を発見した。被ばくしない人と比較して、クロルピリホス被ばく期間が最も長い集団中の5分の1の人の相対リスクは2.28倍高かった。
 
 ・ 一部のクロルピリホスを含む製品で溶剤として使われているキシレンは、仕事でキシレンを吸入する労働者の白血病発生率を増加させる[1]。キシレンは発癌を助けると考えられており、実験動物で他の発癌物質による皮膚癌の数を増加させる[1]。
 
 
変異原性
 
 ・ クロルピリホス再登録のために提出された遺伝障害の検査の大部分は、陰性である[1]。
 
 ・ 多くの別の研究は、クロルピリホスが遺伝障害を起こすことを示している。
 
 ・ 人間のリンパ節の細胞を用いた試験は、姉妹染色分体交換(細胞分裂中に対となる染色体内での遺伝物質の交換)を起こす[1]。
 
 ・ 人間の白血球を用いた試験で、姉妹染色分体の交換が増加する[1]。
 
 ・ 実験動物でも遺伝障害を起こすことが示されている。
 
 ・ マウスの脾臓細胞で、クロルピリホスは染色体異常と姉妹染色分体交換の頻度を増加させる[1]。
 
 ・ 生きているマウスに、注射や経口投与 ・皮膚吸収によって、クロルピリホスは骨髄で多染性の赤血球(幼弱あるいは変性した赤血球)数増加を起こす[1]。
 
 ・ クロルピリホスの経口あるいは経皮被ばくは、背血球中で小核数を増やす。小核は先行する細胞分裂が異常であった場合に形成される[1]。
 
 ・ チャイニーズハムスターで、クロルピリホス被曝後に骨髄細胞で小核が見られている。実験は生きているハムスターと培養細胞で行われた[1]。
 
 ・ 哺乳動物以外の生物でも遺伝障害が見られている。
 
 ・ ショウジョウバエで、クロルピリホス製剤は羽の原基となる細胞の変異を増やし、劣性性連鎖致死突然変異を増やす[1]。
 
 ・ オオムギの花粉母細胞と根端細胞、カラスノエンドウの根端細胞で染色体異常を起こす[1]。
 
 ・ タマネギ根端細胞で小核を生じる[1]。
 
 ・ 3種類の細菌でDNA障害を起こす[1]。