体臭を数値化する新商品も
ニオイチェック・ロボットも登場
「体臭気にし過ぎ」時代ならではの新商品も登場している。
コニカミノルタが昨年、売り出した「クンクン ボディ」は、スマホの専用アプリを立ち上げ、頭・耳の後ろ・脇・足から測りたいポイントを選択。
そこにスマホを近づけると、汗臭・ミドル脂臭・加齢臭の強さを10段階で示してくれる。
バッグやポケットに入れて持ち歩け、更衣室やトイレでもすぐにチェックできる。
ベンチャー企業のネクスト・テクノロジー(北九州市)は昨年の「2017国際ロボット展」に、犬型ロボット「はなちゃん」を出展した。
鼻の先にガスセンサーがついていて、ユーザーが靴下のニオイを嗅がせると、いい匂いなら「すり寄り」、可もなく不可もなければ「ワンワン吠え」、ニオう場合は「ゆっくり崩れ落ちる」。
家庭や職場の変化反映
人間関係の希薄化も原因
日本社会は一体なぜ、これほどニオイを気にするようになったのだろうか。
背景にあるのは社会の変化だ。
まず、家庭内から強い「生活臭」が消えた。
汲み取り式トイレはなくなり、焼き魚や煮物のにおいはダクトに吸い込まれる。
子どもの頃、祖父母と一緒に暮らした経験のある人は、加齢臭を嗅いでも「おばあちゃんのにおいだ。懐かしい」と感じるが、経験のない人はクサいとしか思わない。
一方で家屋の気密性が増したから、父親の体臭やトイレ・靴箱などのニオイが気になるようになった(注1)。
(注1)最近の若い人たちは小さいころから天然の香りに触れることが少ない。
たとえば、天然のイチゴを食べる前に、イチゴの香料の入ったアイスクリームやチョコレートをたくさん食べる。
そういう経験の積み重ねで、人工的な香料などのにおいはよくわかるが、天然の複雑なにおいはよくわからなくなっている可能性がある。
実際、ヒノキの香りを嗅いでクサいと感じる若い人たちが少なくない。
ビジネスの世界や職場では、ニオイに敏感な女性が増えたことと、人間関係が希薄になったことが関係している。
「かつてのように人間関係が濃厚であれば、お互いのニオイは嫌だとは思わない」(「汗博士」の異名を持つ五味常明「五味クリニック」=東京都新宿区=院長)のだが、そうではなくなった。
追い打ちをかけたのが、節電意識が高まって、冷房温度の引き上げが広がり、オフィス内や車内が暑くなって汗をかきやすくなったことだ。
売り上げ増を目指しての化粧品会社の働きかけも見逃せない。
ネットのアンケート結果などから「ニオイ(体臭)は相手の印象を『50点以上』減点する」「『スメルハラスメント』の認知率は、3年で2倍以上」などと指摘して、ニオイの問題を顕在化させ、「体臭や口臭のケアは、もはや『できるビジネスマン』にとって必須のエチケット」などとあおった。
人間には、知らなければ気にならないが、いったん気にし始めると気になって仕方がなくなるという認知特性がある。
しかも同調圧力の強い日本社会だから、海外の人からは「どうしてそこまで」と言われるほどの「ニオイ(体臭)気にし過ぎ」社会になってしまった。