・潮流を読めない日本の大企業が、けちょんけちょんに
これが世界の笑いもの(怒りの対象)になっているわけです。
「世界中でどうやって化石燃料を燃やさないですまそうか、と考えているのに、今さら石炭火力発電機などを売っている場合じゃない。
どうやったら『脱炭素』を達成できるのか本気で考えろ」、と今回のCOP23では、日本企業はけちょんけちょんに叩かれました。
世界中で炭素を燃やすことはやめよう(中国でさえ5年で800基以上も予定していた石炭火力発電の増設をストップしているし、フランスも石炭発電所の全廃を発表しています)と舵を切っている時に、その石炭を燃やすパワープラントを輸出促進しようとしているのは誰だ、と名指して非難されました。
また、COP23が始まる前は多くの日本大企業の幹部が「環境問題で進んでいる日本の技術を活用してもらえば世界に貢献できる」などとテレビで語っていましたし、特に重電機メーカーの役員は、世界中の石炭火力発電機を日本製のガスタービンに変えればエネルギー効率を30%以上上げられる、と胸を張っていました。
繰り返しますが、世界中が石炭を燃やすことをやめようとしているときに、まだましなものがある、と言ってこれを推進するのはこれこそ時代錯誤、下手をすると詐欺師、と言うべきでしょう。
世界の評価は「日本は技術力があるのに、なぜ脱炭素にその技術を活用しようとしないのか」ということであり、この総会でも実際に世界中から非難が集中。
脱炭素における「周回遅れのランナー」と呼ばれました。
つまり、日本はいまだにガスタービン重電機を売りまくる「悪の商人」……でありまして、言い方はよくないかもしれませんが、核拡散に走る北朝鮮と「2大悪」と呼ばれる日も、そう遠くないかもしれません。
実際に、この時のドキュメンタリーをNHKが放送していて、意気揚々と日本のエネルギー節約技術を世界中にプレゼンしようと乗り込んでいった某企業の幹部が、「日本はそんなことをやっている場合ではないのではないのか、どうして脱炭素に本気で取り組まないのか」、とやり込められ、半泣きになっている姿は印象的でした。
アメリカから日本に帰ってきてみると、多くの日本人が「日本の環境技術は進んでいる」と勘違いしているのにびっくりします。
実際われわれは、日本でも岩手県・紫波町の「オガールプロジェクト」で断熱技術を多用した脱炭素体育館を作りましたし(エアコンの実働は年間10日にも満たない)、今その断熱技術を駆使した住宅の販売に力を入れているところです。
しかし、いざ、まずはエネルギーを使わない、断熱技術を取り入れた住宅を作ろうとしても、モデルになるようなものは皆無です。
すべてゼロから地元の工務店の方がアメリカや欧州で手弁当で学んできて、それを試行錯誤しているのが現状なのです。まともな比較基準すらありません。
それはそれで紫波町の工務店の将来のビジネスキラーコンテンツになるので、喜ばしいことではありますが、これだけ世界の流れがはっきりしているのに、住宅建材としては最もエネルギー効率の悪いアルミサッシを売りまくっている日本の大手建材メーカーや、それを多用する大手住宅メーカーは「世界の環境テロリスト」、として名指しされる日もそう遠くないかもしれません。
というか、なぜ技術も資本もある彼らこそ、先頭を切ってやろうとしなかったのか(少なくとも2011年の時に始めていれば今頃世界トップシェアを占めることはそれほど難しくなかった)不思議でなりません。
ワタクシのような中小企業の社長にでさえこの潮流の変化は明らかで、わざわざリスクを取ってアメリカで事業を始めたくらいですから、多くの駐在員をアメリカに送っている日本の大手企業にとって取り上げるには極めて容易いテーマだったはずです。
しかし、今でもまだ「勘違い」している人が多い、というのが日本の現状です。
今や「省エネこそが、大きな利益を生む時代」に
例えばワタクシがこういう話をすると「うちの本社および事業所はすべてソーラー発電をやっておりまして……」と胸を張る1部上場企業の社長がたくさんおられるわけです。
「では、御社の物流や営業などの自動車なども含め全体的なDecarbonizationをどうされていますか」、と伺うと、何を質問されているかすらわからない、というケースがほとんどで、脱炭素=自然エネルギー開発、という狭い思考回路に拘泥しています。
ここでは、「ランニング」という視点(使うものと生み出すもののコストとプロフィットのバランス、つまり収支)という視点がすっぽり抜け落ちてしまっており、省エネ、しかも今までやったこともないようなレベルまでやらないと、この再生エネルギーの初期投資は間違いなく赤字になる。
そうするとカネがかかるから、やっぱり再生エネルギーはだめね……となるのが、日本企業のこれまでの悪循環なのです。
実は断熱などの省エネは、すぐさま光熱費の減少という形で「おカネになる」ので利益につながり、まさに先のNHKのドキュメンタリーでウォルマートの幹部が言っていたように、これ(省エネ)こそ、大きな利益を生むための投資だ、ということが全く理解できていない、と言えましょう。
再生エネルギーに投資ばかりしていても、企業としては収支があわないです。
先ほど書きましたように、こうした脱炭素(Decarbonization)を目に見えた形で達成していない会社はここ数年で間違いなく世界の市場から追放されます。
市場からの締め出しはおろか、資本も集まらず、あっという間に「テロリスト企業」というレッテルを張られます。
ビール会社から自動車会社に至るまで、日本の大企業は急いで取り組まねば、世界の市場から追い出される、ということだけははっきり申し上げておきます。
「トヨタ自動車のプリウスがエコだ」、なんて言っているうちに、世界はさらにその先に向かっていることをくれぐれもお忘れなきよう……。
さて、もうひとつのキーワードをご紹介しましょう。
脱工業製品です。ちょうどわたくしが1960年生まれなので、私が育った高度成長期1970年代というのは、大手工業製品にすべてが飲み込まれる時代でした。
大手スーパーの進出により、個人商店はことごとくつぶされ、零細個人企業による丁寧な手工業は豆腐、パン、肉・魚、野菜に至るまで消費者から見放され、つぶされていったという時代でした。
今からすると信じられませんが、味も安全性も何から何まで、今の時代に引き直して、極端に言えば「山口商店」よりも「イオン」など大手の商品に信頼があったわけです。
そういう時期が長く続きましたが、これも、流れは今や大きく変わりつつあります。
大手スーパーの「工業製品」を、まだ買いますか?
つまり、近所のパン屋さん、お肉屋さん、魚屋さんなどが消えていき、すべて大手スーパーに取って代わられて、そこで売られるもの、というのは全国規模で工業製品として売られるため均一で値段が安かったため、高度成長期に庶民は殺到したわけです。
たまに端っこが焦げたりしている近所の手作りのベーカリーのパンは消費者に「不良品」呼ばわりされて消えていき、家庭で食べるパンはすべて大手企業が工場のラインが作り出すもので、それが良いものだ、と消費者が信じていたのです。
ワタクシの母親などが典型例で、近所のパン屋であんパンを買うと「衛生状態が悪い」、とひどく怒られ、「ヤマザキパンのあんパンを大手スーパーで買いなさい」、と指導されたと言います。
近所のお肉屋さんのメンチカツもアイスクリームも、衛生状態が悪くて危ないので食べてはいけない。
そしてそれらはテレビで大々的なコマーシャルを打つことができる大手の食品加工企業の商品に取って代わられていったわけです。
それが最終的にコンビニという形まで行きついたのが現在なわけですが、これも世界の最先端では、すでに変化をしています。
少なくともアメリカ西海岸でまともな人(ある程度以上の学歴があって字が読める人)で食品を大手のスーパーで買う人は、ほとんどいません。要するに「何が入っているのか不明な工業製品を口の中に入れる不安」が急に浮上してきたわけです。
そりゃそうです。
あれは食品というより、極端なことをいえば、化学製品や工業製品に近いですからね。
今日本でも、近所のブーラジェリー(パン屋さん)が朝しっかり焼いているフランスパンが、普通のスーパーで売っているフランスパンよりも2割高いとして、果たしてみなさんはどちらをお買いになりますか?
また、スーパーのハム売り場の100g80円のソーセージと、近所のお肉屋さんの手作りソーセージ(100g200円くらい)とどっちを、お子様に食べさせたいと思いますか?もちろん、街の個人商店が、すべて素晴らしい商品を供給しているという保証はありませんが、素材にこだわっている商店はその店主を見ていればわかりますよね。
(余談ですが、スーパーで売っているハム、ソーセージの単価は、同じグラム数の豚肉を買うより安いことを「変だ」、と思わないとすると、あなたは相当毒されてます)。
はたまた、おばちゃん二人で手作りでおつまみを出しているカウンター居酒屋と大手の居酒屋チェーン(おそらく3割は安い)と、どっちで酒を飲みたいですか?