イソシアネートによる過敏性肺炎と気管支喘息発作を併発した1例 | 化学物質過敏症 runのブログ

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●症 例
イソシアネートによる過敏性肺炎と気管支喘息発作を併発した1例 酒井 珠美  片山 伸幸  早稲田優子  大倉 徳幸  藤村 政樹
要旨:症例は61歳男性で,イソシアネートによる過敏性肺炎と喘息症状の合併を認めた.家具製造工場に 勤務し,イソシアネートを含有したポリウレタン接着剤を使用していたが,職場で増悪する発熱,咳嗽,喘 鳴,呼吸困難の精査と治療のために入院となった.

胸部CT上,びまん性小葉中心性粒状陰影を認め,気管 支肺胞洗浄液細胞分画は過敏性肺炎に矛盾しない所見であった.イソシアネートに対する特異的IgE抗体は 陽性であった.

また,気道可逆性試験は陽性で気道過敏性も亢進しており,気管支喘息と診断した.

呼気中 一酸化窒素(FeNO)濃度の上昇も気管支喘息の診断根拠となった.

職場での環境曝露試験では,咳嗽,息 切れ,胸部絞扼感が出現し,体温の上昇,白血球数の増加とCRPの上昇,ピークフローとSpO2 の低下を 認めた.

以上から,過敏性肺炎,気管支喘息ともに誘発試験陽性と判断した.

環境曝露試験でFeNO濃度 の低下を認めた点は興味深い所見であった. 


緒  言 toluene diisocyanate(TDI),4,4′-methylenediphenyl diisocyanate(MDI),1,6′-hexamethylene diisocyanate (HDI)などのイソシアネートは,ウレタンフォーム,コー ティング剤,接着剤,塗料などの原料として工業的に一 般的に使われている1).

イソシアネートは,高濃度曝露 による直接的な呼吸器障害以外に,職業性喘息の原因と してもよく知られている.

一方で,イソシアネートによ る過敏性肺炎の報告もあるが気管支喘息よりは少なく2), イソシアネートによる過敏性肺炎と気管支喘息の合併の 報告はまれである3).

我々は,環境誘発試験にてイソシ アネートによる過敏性肺炎と気管支喘息の合併と診断し た症例を経験したので報告する. 

症  例 患者:61歳,男性. 主訴:湿性咳嗽,胸部絞扼感. 既往歴:特記事項なし(アレルギー歴なし). 嗜好歴:喫煙30本×43年.
現病歴:職歴として木工業,機械組み立てなどを経て, 36歳からは家具製造工場に勤務していた.60歳時に外 傷にて入院し,1年間休職した後に復職した.

復職後2ヶ 月たった頃,38.7℃の発熱,咽頭痛,胸部絞扼感が出現 したために近医Aを受診し,急性気管支炎と診断され て処方を受けた.

しかし,その後1ヶ月にわたって発熱, 咽頭痛,湿性咳嗽,胸部絞扼感,全身倦怠,喘鳴,労作 時呼吸困難を繰り返し,近くのB病院を3回受診した. 

3回目の受診時に同院の呼吸器内科へ紹介となり,問診 にて仕事のない休日には症状が軽快することが明らかと なったため,職業環境曝露による過敏性肺炎と気管支喘息の合併が疑われ,精査加療目的に金沢大学附属病院呼 吸器内科に紹介入院となった. 

入院時身体所見:体温36.5℃,血圧120/66 mmHg, 脈拍78回/分,呼吸数16回/分.聴診上,全肺野で強制 呼出時に喘鳴を聴取した. 

入院時の血液検査(Table 1)では,白血球数,CRP は正常であった.総IgE値は上昇し,KL-6,SP-D, SP-Aも上昇していた.

喀痰培養では口腔内常在菌が検 出されたのみであった.

胸部単純X線写真では,両側 にびまん性小粒状影を認めた.胸部CT(Fig. 1)では, びまん性の小葉中心性の粒状影を認めた.