18:平成16年度本態性多種化学物質過敏状態の調査研究 | 化学物質過敏症 runのブログ

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4.低濃度長期ホルムアルデヒド及びトルエン曝露の免疫系、及び神経―免疫軸への影響に ついての検討 
 
研究協力者 藤巻秀和、黒河佳香、山元昭二、掛山正心(独立行政法人国立環境研究所) 欅田尚樹(産業医科大学) 
 
(1)研究目的 MCSの発症と低濃度化学物質曝露との関連について検索するためには、アレルギー反応と は異なる過敏状態の誘導の有無について調べることは大変重要である。

MCS患者の中にはア レルギー疾患の既往歴のある人が60%近く含まれるという報告もみられているので、MCSの 発症と免疫系との何らかの関連性が推測された。 

化学物質の曝露による過敏状態とアレルギー性炎症モデルでの反応指標(IgE抗体産生、Th2 タイプの優位性、肥満細胞活性化等)との違いについて明らかにするために、ホルムアルデ ヒドのみの曝露群と抗原を腹腔内投与とエアロゾルで感作しながらホルムアルデヒドを曝露 したアレルギーモデル群における免疫応答を比較検討した。

また、神経―免疫軸における反 応のかく乱がMCSの発症に関わることが示唆されていたので、神経栄養因子や神経伝達物質レ ベルでの変動についても検討した。 
 
(2)研究方法 すでにこれまでの報告書に詳述してあるので、省略。 
 
(3)主な研究結果 3-1 肺における炎症性反応の解析肺における炎症反応の指標として考えられる肺胞洗浄液における炎症性細胞の集積とその 中のサイトカイン・ケモカイン産生についてホルムアルデヒド曝露について調べた結果、ホル ムアルデヒド曝露のみ(抗原無群)では肺胞洗浄液中の炎症性細胞数や proinflammatory サ イトカインレベルで変動はみられなかった。

しかしながら、アレルギーモデル群の 2000ppb 曝露群では有意な炎症性細胞の増加が見られた。

集積した炎症性細胞の分類では肺胞マクロ ファージと好酸球の数の有意な増加がみられた。 次ぎに、肺胞洗浄液中の炎症性サイトカイン産生について、アレルギーモデルマウスの IL-1β産生は濃度依存的な低下を示し 2000ppb 曝露群で有意に低下した。

IL-6 と TNFα産生で も同様に低下の傾向がみられたが、統計学的には差はなかった。

炎症性細胞の集積や活性化 に関与するケモカイン産生では、MIP-1αと MCP-1 産生においては抗原の感作の有無に関係な くホルムアルデヒド曝露群と対照群との間に有意な差はみられなかった。 

トルエン曝露の結果では、トルエン曝露のみで肺胞洗浄液中の総細胞数とマクロファージ数 は有意に増加したが、好中球とリンパ球などでは差はみられなかった。

アレルギーモデルマ ウスにトルエン曝露を行うと、肺胞洗浄液中での炎症性細胞の集積においては、トルエン曝 露による有意な増加は認められなかった。

トルエン曝露のみでは肺胞洗浄液中の IFN-γ産生量の有意な低下がみられたが、TNF-αでは差はみられなかった。