Ⅴ. 危険性の要約
環境と生物への危険性
環境毒性が低いとされるので、TDI化学物質に暴露に伴う危険性は、環境への影響ではなく人の健康への影響に集中している。
TDIとその劣化生成物の実験的環境毒性データは、水生生物には低毒性でやさしいことを示している(Curtis,et al., 1978; MITI,1992; Tadpkoro et al., 1997;Pedersen et al., 1998)。
他の毒性データは、2,4- TDIと2,6-TDIに暴露した植物や土中の虫など陸生生物(Van der Hoeven, et al., 1992a; Van der Hoven et al., 1992b)と鳥(IUCLID,2000)には、には効果が低いらしいと示唆された。
人への危険性
ジイソシアネート暴露で引き起こされる人への健康危険性のほとんどのデータは、職業作業者に基づいている。それらのデータはジイソシアネートへの暴露が皮膚炎、皮膚と気道の刺激、免疫過敏性、と喘息を起こすことを示している(NIOSH,2006)。
呼吸と皮膚のジイソシアネートへの暴露は、イソシアネート喘息の発現に寄与していると考えられている(Bello et al.,2007)。
イソシアネートへの暴露は仕事での喘息の主原因であるとよく記されていて、暴露が行き渡った労働者では1-20ぇと推定されています(Ott et al.,2003;Bello et al.,2004)。
ひとたびジイソシアネートで過敏になった作業者はその後の暴露でひどい喘息を引き起こす。
スプレイ作業や加熱の典型的な過程で、空気中に発生した蒸気と霧に作業者が皮膚と呼吸を通した暴露が増えるにつれて、喘息の発症はますます多くなる。
たとえば、イギリスの健康安全委員会がイソシアネートを含む塗料吹き付けていた車両修理工が喘息を起こすのにイギリスの労働人口に比べて81倍高い喘息になるリスクがあると報告している(HSE 2009)[http://www.hse.gov.uk/mvr/priorities/isocyanates.htm/]。
ジイソシアネート喘息が少ないケースほど組み立て作業の空気中イソシアネートが低く、またジイソシアネート喘息を起こしたほとんどの作業者は、長い期間(数か月か更に長期間)の暴露経験があったという報告がある。
しかし、過敏反応または喘息を引き起こすイソシアネート暴露の最小値は知られていない。
さらに、免疫反応とそれに続く人への障害は種々様々である(Redlich et al.,2006)。
死亡事故は、過敏になった人のジイソシアネート暴露と関係づけられると報告されている(NIOSH,1996;ACC,2005)。EPA IRISプログラムでは職業暴露データに基づいて、指針濃度を作った。
職業的でないTDIへの暴露の報告はほとんどない。
しかし準職業的な喘息がTDIの偶然の暴露で生じたらしいという報告がいくつかある(De Zotte et al.,2000)。
また、TDIに対する抗体が、ポリウレタン発泡材工場の近くに住む住民らに検出されていて、施設からの環境汚染で暴露されたことを示している(Orloff et al.,1998;Darcey,2002)。 実験動物での毒性
急性、亜急性および慢性の動物暴露研究において、1%以上で濃度の増加につれてひどくなる鼻の刺激を伴い、呼吸器が標的器官であった。吸入暴露に伴って、TDIは体全体に均一に分布した(Collins,2002;Gledhill et al., 2005)。TDIは皮膚、目および肺の刺激、長い期間の吸入暴露で肺機能の進行性の不調を起こし、動物に皮膚と呼吸器の暴露による呼吸器過敏性であった(Collins,2002)。クロス増感は、マウスで、そして、人間のMDI、TDIとHDIの間でMDI、TDI、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)とジシクロヘキシルメタン・ジイソシアネート(HMDI)の間で観察された(O’Brien et al.,1979)。
TDIはvitroの遺伝子突然変異分析においてポジティブで、vitroマウス小核分析において否定的である(Collins,2002)。
動物実験のデータは、TDIが発がん性である場合があることを示している(Collins,2002)。最近の動物実験のデータは、市販級のイソシアネート(2,4-と2,6-TDIの80:20の混合物)に暴露
すると癌が発生することを示している。ラットとはつかねずみのTDIに対する反応はOSHAの発がん性可能物質という等級の基準になっている(29CFR 1990.112)。
NIOSHはTDIとその異性体への職業的暴露を最小にするように勧めている(NIOSH 1989)。
TDIの発がん性影響は(Loeser 1983;NTP 1986)国際がん研究機関(IARC)でも、また世界保健機構(WHO)でも研究さIARCはその研究データでTDIが動物に発がん性であると結論している。
WHOはTDIが人に発がんの可能性あるとして取り扱うべきであると結論している。
さらにまた、NIEHSはその発がん性に関する2011年のレポートの中で、TDIを人に発がん性が予想されそうなものとして数えている。