11:平成15年度 本態性多種化学物質過敏状態の調査研究研究報告書 | 化学物質過敏症 runのブログ

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4.脳内海馬での情報処理変化の検討 これまで、2000ppb ホルムアルデヒド濃度においては、海馬での形態学的に顕著な変化は 認められなかったが、神経細胞内リン酸化酵素活性の変化というシグナルトランスダクショ ンの変化、海馬神経細胞シナプスの可塑性の変化、GABA 抑制系の減弱を報告してきた。 

今年度は、MCS と診断された患者にアレルギー性疾患の既往が多いという疫学的報告が あることから、ホルムアルデヒド曝露による海馬における長期増強(long-term potentiation, LTP)の変化と生物学的因子(アレルゲン投与)による影響との異動について解明すること が課題となった。

アレルギーモデルとして一般的な卵白アルブミン感作モデルマウスを用い た。

Input/Output 曲線と LTP を群間で比較した結果、400ppb 濃度のホルムアルデヒド曝露と 卵白アルブミン感作の単独および重複付加いずれも Input/Output 曲線および LTP 増強度に影 響しなかった。

次に、MCS 患者による中枢神経関連の愁訴のなかに不安が報告されている。 

2000ppbホルムアルデヒドを12週間曝露した雌C3H/HeNマウスを用いての行動試験として、 活動性・探索行動を評価するオープンフィールド試験、加えて不安行動を評価する高架プラ ス迷路試験、空間学習を評価するラシュリー迷路試験、回避学習を評価する受動的回避学習 試験、侵害受容(痛覚)を評価するホットプレート試験の 5 試験を行った。

その結果、マウスへの慢性ホルムアルデヒド曝露は、不安を増強し、回避学習を促進するが、一般活動性、 空間学習機能、侵害受容には影響しないことが示唆された。 
 
5.その他の影響 トルエン曝露およびアレルギーモデルとしての OVA 感作マウスの気道系を中心とした病 理学的検索を実施した。

その結果、鼻腔呼吸上皮において OVA 感作群では好酸球の浸潤を認 めたが、トルエン曝露の影響は観察されなかった。

また、粘液産生細胞である杯細胞の出現 頻度ではトルエン単独群、OVA 感作群で増加がみられた。気管・肺の組織においては、OVA 感作により杯細胞の増生、肥満細胞の上皮内への浸潤を認めたが、トルエン曝露による修飾 作用は観察されなかった。

以上、今回曝露に用いたトルエン濃度では、顕著な炎症像は認め られなかった。