・この実験は、ボトルの中にりんごを入れます。
そのボトルに黄色いシールを貼り付けるんですね。
中身はりんごです。このにおいを嗅いで、何のにおいがしたかと解答していただくと、半分の人は「バナナ」と答えるんですね。
鎌倉:においって、そんなにあやふやなんですか?
坂井さん:においというのは、においを嗅いで、そのもので判断が難しいので、見た目ですとか、あるいはそれを出している人だとか、物、このイメージがそこへ結び付くわけです。
(この場合だと、黄色だから「バナナ」?)
そうなるわけですね。ですから、誰かからにおいがすると、そのにおいそのものというよりは、その人との人間関係がそこへ圧縮されて出てくるというような感じですね。
(人間関係がいいと、同じにおいでも、いいにおいに感じる?)
そうなると思います。
体臭に敏感になる人が増える中で、その対策のために香りをつける商品の市場が今、拡大しています。ところが、その香りが新たな問題となっているケースもあるんです。
あふれる“香り” トラブルの種にも
夏の厳しい暑さで知られる、埼玉県熊谷市。
市役所の入り口に涼やかなミントの香りを漂わせるための機器を設置していました。訪れた人に快適に過ごしてもらおうと若手が考えたアイデアでした。
ところが、市民からは意外な反応が寄せられました。香りが苦手だという人からの批判的な意見が相次ぎ、撤去を余儀なくされたのです。
熊谷市役所 柴田忠徳さん
「われわれ事業として、よかれと思ってやったことなんですけど、不快に思われた方がいたということは大変残念。」
香りが原因で家庭内トラブルが起きることも。
夫と娘2人と暮らす、この女性。
あることを巡って、毎日のように夫婦ゲンカになってしまうといいます。
夫婦の普段のやり取りを記録してもらうと…。
妻
「くさっ!ツーン。」
夫
「いい香りでしょ?」
夫は、数年前から体臭を気にして、香りのあるスプレーやシャンプーを使うようになりました。
妻
「シュッ、シュッってしたの?」
夫
「汗びっしょりだから。」
妻
「いいよ、そんなの付けなくて!」
夫
「(スプレー)持って行くのを忘れたから買ったんだ!」
妻
「買わなくていいのに。舌がしびれる!」
妻は、スプレーなどの香りで不快になるだけでなく、舌のしびれなどを感じることもあるといいます。
妻
「主人がこうやって香りにこだわるようになったのも、私と娘が主人のことを汗臭いとかって言っちゃったのがきっかけなのかな。今になってみたら、からかい過ぎたかなと思うんですけど。気にしないでって言っても、もう聞いてくれないんですね。」
香りがつらい “化学物質過敏症”
更に、「香りの中に含まれる化学物質によって生活に支障を来す」という人たちまで現れています。高田ひろ子さんも、その1人です。
人混みを歩く時は、お手製のマスクが欠かせません。
なんと5枚重ねです。
高田ひろ子さん
「すれ違う人とかの柔軟剤みたいなにおいがしたりすると、しんどくなると嫌なので。」
ふだんの買い物でも不便を強いられています。
香りの強い商品を置く店には入れないことが多いのです。
高田ひろ子さん
「やっぱりダメです。入り口でダメです。」
夫は、選んだ商品で妻の症状が出ないかを確認してから支払いをします。
夫
「体に大丈夫な、においなのかどうなのかっていうのは、こちらでは、さっぱりわからない。こちらが考える以上の問題なので、本人じゃないと分からない部分があると思います。」
高田さんは、専門医から「化学物質過敏症」と診断されました。苦手な香りに出くわすと、頭痛や激しいどうきなど、重篤な症状に襲われます。ここ数年は、以前よりも症状が悪化し薬の数が増えました。
高田ひろ子さん
「初期のころは、その人から逃げるとか、その場所から逃げていたら、30分もすれば体が元に戻っていたんですけど、ちょっと起き上がれなかったり、めまいがして、ずっと寝ていたりということがあるようになったので、本当に(香りが)怖いっていうのが本音です。」
今では、中古で買った本も外で干さないと読めません。
他の家でついた香料が残っているからです。