・9.1.7 診察と診断の方法
MCSの確実な診断が存在しない以上、その診断を妥当であると確認する又は不当性を証明する確かなテスト方法は存在しない。
アメリカの医学専門家らは、この病気の診断を達成し、MCS患者のフォローアップを行うことを目的として、科学的指針(ガイドライン)を設定している。
9.1.8 アメリカとヨーロッパの当局によるMCSへの対応
アメリカにおける多くの研究と会議が行われた10年間の後、最近数年はMCSに関する当局の活動は鈍っている。
EPA と NIOSH は、MCSに関する予防的措置をなんらとっていない。
カナダの保健当局は、診断の確実性が欠如していてもMCSを認知する用意があった。しかし、支持が得られず、その計画をあきらめざるを得なかった。
MCSへの興味はカナダでも低下している。
しかし、地方での活動が地方の環境及び保健当局の間で進められ、公衆も個人の匂い及び匂いを含む製品の公共の場所(学校、病院、町の公会堂、公共交通、いくつかの職場)での使用を自主的に減らそうとしている。
ほとんどのヨーロッパ諸国では、MCSはそれほど知られておらず、疾病としても認められていない。
取り組もうとした環境当局もMCSに関する予防的活動を完了していない。
環境病を診断し、治療するための臨床環境医学センターが設立され、メディアが徐々にこれらの病気を扱うようになってきたスウェーデンとドイツでは、MCSに関する研究活動を実施している(頻度、病気の機序、診断基準など)。現在、ドイツは一般的に環境病、そして特にMCSに関し積極的な研究とプログラム開発を行っている。
9.1.9 デンマークの状況
デンマークでは、匂い過敏症と溶剤不耐症という表現が、MCSの代わりによく使われている。その状態はそれ自身では疾病として認知されておらず、登録されていない。
産業医学者及び環境医学者、精神身体(機能)疾病の専門家、及び、わずかな耳鼻咽喉科の医学者を除くと、デンマークでは、わずかな医師のみがMCSに関する何かについて知っている程度である。
ほとんど産業医学者及び環境医学者がMCS様症状の患者を診察してきた。
以前に溶剤に曝露したことがある人々を含む、コペンハーゲンのある患者たちは、デンマーク・コペンハーゲン大学病院国立病院耳鼻咽喉科(Risgshospitalet)で特別な開放刺激テストを用いて診察されている。
このテストは、MCS患者の匂いに対する生理学的な反応を確認するためのものである。
デンマークのMCS患者組織は、環境中の匂いの削減に関し、デンマークEPAにアプローチした。
デンマーク当局は、直接のアプローチがある場合を除いて、総合的にMCSに対処していない。
化学物質曝露(初期段階及び引き金段階に関連)のリスクを削減し、可能な限り、低濃度の化学的匂いの発生(引き金段階に関連)を削減するために、当局が可能性ある取り組みを目指すことは可能であるように見える。
これはある分野を規制し、化学製品と材料の使用が高い曝露をもたらす状況をなくすことを目指す情報を広めることで実現できるかもしれない。
それはまた、”不必要な化学物質”、特に香水の使用の削減を目指すもっと多くの取組みを含むべきかもしれない。
保健当局は、MCS患者の診察、診断、治療、相談、及びフォローアップを改善する必要がある。
予防的措置はまた、職場環境においても必要である。デンマークにおけるMCS症例に関する比較的少ないデータに基づくと、職場での曝露は特にMCSを進展させると推定される。
予防的取組みが計画される前に、化学物質の使用と曝露、その健康への影響、そしてMCSの問題の程度に関するいくつかの側面の詳細な調査が実施されるべきである。