・3.1.3 専門医師組織のMCS問題に対する態度
いくつかの職業医学団体がMCSに関する議論に参加した。
これらには、臨床環境医学を代表するアカデミー(AAEM)や、アメリカ医学協会 American Medical Association(AMA)傘下の5団体が含まれる。
(最も重要なコメントは引用符””で囲まれている。)
1992年AAEM報告書は、MCSを含む全ての環境病の病因のための全体論的(holistic)モデルを示している(第6章 参照)。
アメリカ医師会 American College of Physicians (1989) ”刺激テストを実施している環境医学者は、診察し治療している病気を定義すべきであり、blinding principle や手順と結果の文書化のような実験的設計のための現在の基準を固守すべきである。”
アメリカ医学協会 American Medical Association (1992) ”MCSは臨床上の症候群として認められるべきではない(MCS should not be recognized as a clinical syndrome.)。”
アメリカ医学協会(AMA)、アメリカ肺協会、アメリカEPA、消費者団体(1995) ”MCSの疑いは、医学の歴史の徹底的な評価を求めている。
”その症例は精神医学的疾病として片付けられてはならない。
心因性問題の存在の可能性が検討されるべきであり、例えば、アレルギー学者や肺専門家などの専門家による診察の必要性が検討されるべきである。
アメリカ・アレルギー、ぜん息、免疫学協会(1997) ”発表されている多くの理論の中で証明されたものはひとつもない。”
その全てがMCS研究と患者の治療に関する専門家である31人の科学者と臨床医師たちからなるグループからの提案(Archives of Environment Health, 1999)。
臨床計画案については第7章を参照。
アメリカ労働環境医学協会 American College of Occupational and Environmental Medicine (1999)は、MCSに関し最も適切な医学団体である。ワーキング・グループは、補償と社会的問題に関する決定を行う場合には医師たちの意見が重要であることを強調している。
メンバーは環境要素とMCS機序との間の関連性の証明がまだ欠如しているということを認めている。
従って、彼等は、MCS発症頻度の削減を目的とする環境的介入(調査と規制)の科学的根拠が見つからない。
しかし、これは屋内環境には当てはまらない。
ACOEMは、生物心理学的病気モデルを支持しており、それによって、彼等は、心理学的及び生理学的の両方の要素からなる複雑な病気の機序の背後にある仮説を支持している。
全ての組織は、医師たちがMCS患者に対し真の共感と関心を示すことの重要性と、科学的結果はピアレビューにより科学的ジャーナルで発表されるべきことについて合意した。
3.1.4 コメント
多くの会議とワークショップがMCSに関する因果関係を見つけるために1990年~1998年の間にアメリカで開催された。
しかし、MCSの原因と機序は未だに発見されていない。
もっと明白な科学的結果を生み出すであろう研究活動のための新たな専門的で高品質な提案が継続的に行われている。
Annex D (Topic list of recommendations for MCS research)に、上記の7つの会議からの最も重要な勧告のリストが挙げられ、題目に従って編集されている。
ほとんどの会議で研究のために勧告された題目は:
疫学的研究
病気の定義
刺激テスト(Provocation tests)
勧告のほとんどは、1991年の第1回会議において発表さたものである。それ以降の会議は、同じ”MCS儀式”の繰り返しであるように見える。
会議の最後には彼等は常に過去の勧告が実施されておらず、なんら進捗が見られないと結論せざるを得なくなるという事実にもかかわらず、経験ある科学者の全てが新たなワークショップと会議を開催し続けたということは驚くべきことである。
研究のための膨大な資源と多くの時間が国家の取組みに投入されたが、その成果は明らかにその投資には及ばない。