・1.は じ め に
シ ッ クハ ウス症候 群 の病 態解 明 に関 す る知見は,こ こ数年 来で飛躍 的な進歩 を遂 げてい る.それ らは,
(1)シ ックハ ウス症候 群の概念 の確 立,
(2)発症 機構の解 明,
(3)個 人差 要 因に関 する遺伝学 的解析 に関す る研 究等で ある1,2).そ こで本稿 で は, シックハ ウス症候 群の発症 機構 と題 して,主 として本 症 の病態 を理解す るための基礎 的知 見 を解説し,さ らに本症 に関す るの最新の動 向 ・方向性 に ついて解説 してみたい.
2.発 症 機 構 に 関 す る最 新 動 向
シ ックハ ウス症候群 は,室 内空気 汚染 物質 の低用量 曝露 に よる健康 障 害であ り,大 量 の揮 発性有機化 合物が室 内 を汚染 し,い わゆる 「量-反 応 関係」 によ り大 半の居住者 に何 らかの 中毒 所見が生 じる状況 を指 す もので はない.低 用量 であ るが ゆえに,各 種 の化 学物質 が有 す る特徴 的な生体毒性作用 が 明白に現 れ るわけで はな く,ど ち らか といえば,粘 膜刺激 症状 を中心 と した非特 異的 な症状(不定愁 訴)が 主 とな る場 合が 多 く,発 症 に個 人 差要 因が大 き く作 用す る.従 来 より,化 学物質 に よる神経原性 炎症 の関与が指摘 されてい る.シ ックハ ウス症候 群は,元 来何 らか のア レルギ ー疾患 を有す るヒ トが発症 しやすい ことが 指摘 され てお り
3),ア レル ギー性炎症によって損傷 され た皮 膚 ・粘膜上皮 におい て露 出した知覚神経 のC線 維 末端 に化学物 質が作用す るとその情報 は求心性(上 行性 あるいは知覚性)に伝わ り,軸 策反射 に よって遠心性(下 行性)に 進み,遠 心性神 経終 末か らサ ブス タ ンス-Pな どのタキキニ ン類が分泌 され,そ れ らが肥 満細 胞 の受容体 と結 合 しヒスタ ミンを放 出 させ,局 所 の血管拡張,血 管透過性 の亢進 を誘導 させ粘 膜症状 をは じめ血管 拡張 ・透過 性亢進 に伴 う様 々 な神 経原 性炎症 に伴 う症状 を引 き起 こす
4)(図―1).ま た,曝露 初期 の段 階で “Sensitization”とい う化学物質 に感作 され る状態,つ い で曝 露 が継 続 されるこ とに よ り “Triggering” と呼 ばれ る過敏性 症状 が誘導 され る状 態 も知 られて いる.一 般 的 なア レルギ ーの成 立 と類似 してい る.そ れ に よると,低 濃度化学物 質の反復曝 露が情動機 能 と関連の深 い大環境化学物質
損傷された粘膜
求心性線維
軸索反射
遠心性線維
タキキニ ン(サ ブス タ ンス-P)分 泌
肥満細胞 か らヒス タ ミン放 出
血管拡張、血管透過性亢進