・各種症状出現
図―1環 境化学物質 による神 経原性炎症と症状
4)脳辺縁系(パー ペ ッツ回路)へ の影響 として抑 制性 ニ ュー ロンのGABA(γ ア ミノ酪 酸)受 容体阻害 し,こ の部位 にお ける局所的 ニュ ーロ ンの興奮性 を誘導 結果 的 にい わゆ る 「化学 キ ン ドリン グ」 を引 き起 こ し,種 々の大脳 辺縁系 症状(情 動反応)を もた らす こ とが提 示 されて い る5)(図― 2).
化 学 物 質の 「反復性 曝 露」 が発 症 に最 も重要 であ り,「反 復性 曝露 」 に よる神 経 細胞 の シナプスの可 塑性変化 あ るい は神経 細胞 の条件づ けの結果 として不定愁訴 が生 じる とい う考 え方が主流 とな りつつあ る.す なわ ち,特 定の住 居内で,揮発性有機化 合物 に繰 り返 し曝 され るこ とで,そ の物質 に対す る感受性 が高 ま り,あ る時 期か ら身体が対 抗 で きな くな るの であ る.Takedaら6)は,Functional MRI(fMRI)を 用 い て,微 量 トルエ ン負荷 を行 な った健常 群 とシ ックハ ウス症候群 の患者群 との脳 内血流 の変動 を検討 した結 果,健 常群で は,負 荷前 後で有 意 な変化 は認め られ なか っ たが,患 者群 で は負荷前 後で脳 内の特定 部位(主として脳室周 囲器官,海 馬領域,小 脳)に お ける血 流が有意 に変 動 した ことを提示 して お り,さ らなる検討が必要 であ る としなが らも,化 学物 質の繰 り返 し曝露 にお ける 「神 経細胞 の条件づ け」の考 え方 を示唆 してい る.我 々も近赤 外線酸素 モニタリング装 置(NIRO)を 用 い た微 量 化 学物 質負荷 テス トで,患 者 群で は負荷 によ り脳 血流量 が大きく変動す るこ とを報告 してい る7).
.3.個 人差 要 因 に関 す る 最 新 動 向前述 した ように,シ ックハ ウス症候 群 は,一 般的 な中毒 の概念 では説明で きない よ うな微量 な化学物 質曝露 によって生 じる ことか ら,同 一環境 においてすべ ての住 人に発 症す るこ とは む しろ まれであ る.そ の理 由は,飲 酒 に強 い弱いが ある ように,化 学物 質 に対す る遺伝 的感受性 が個人 々で異な るか らであ り,「感受性 の違 い」「解毒代謝機 能の違い」 を決定づ ける要 因の一つ として,本 症 発症 に関す る 「 候 補遺伝子 の検 索」 は重 要 な研究 対象 であ る.我 が国 において もこれまで に複数 の薬物代 謝酵素系 の遺伝子多 型 と本症発症 との 関連性 の有 無 につ いて調べ られてい るが,グ ル タチ オ ン-S-ト ラ ンス フェ ラー ゼ(GST)や ニ ュー ロ パ チ ー標 的 エ ス テ ラーゼ(NTE)の 遺伝 子 多 型とシ ックハ ウス症 候群 との関連性が指摘 され ている8).シ ックハ ウス症候群 の発症 機構 の解 明 に関して,遺 伝学 的解析 が鍵 になる こ とを知 ら しめ る報告 であ る.