108;科学的根拠に基づくシックハウス症候群に関する相談マニュアル(改訂版) | 化学物質過敏症 runのブログ

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・10.3.2. 学校への支援
学校での発生はいわゆるシックスクールとして問題になることがあり、子供たちの教育や心の問題にまで影響する点で、深刻です。

住宅とも共通しますが、新築の校舎などを使用し始めた時に発生することが多く、したがって原因は VOC であることが多いのが特徴です。

下記にも述べるようにシックハウス症候群の発症は子供たちからの訴えがなければわかりません。

しかし、小学校の低学年などでは自分の症状をうまく伝えることができない子供たちも多く、校舎の新築、改修工事が行われ、当該の建物や場所で授業を行い始めてしばらくの間は担任の教員は子供たちの様子を特に注意深く見守る必要があります。

症状を訴えるのはクラスの中でも 1 割に満たないことが普通ですので、それらの子供たちが孤立しないような配慮も必要です。
新築での発生の場合、症状を訴える児童生徒は原因となる教室や実習室などに入室できない事態になることもあります。

ただし、VOC が原因であれば、室内の換気を強化することで症状が軽快することも期待できます。

まずは休み時間や室内を使用しないときなどには窓を開放して換気を促すこと、さらに財政が許せば機械換気のシステムを新たに設置するなどの対策を講じた上で症状の変化を見ます。

もし、第 10 章 4 節に示す相談機関で VOC の測定ができるようなら、対策前と対策後の室内 VOC 濃度を比較することでその効果を定量的に評価できますので、より説得力のある対策になります。
なお、シックハウス症候群の発症を早期にキャッチすることとともに、これらの対策もできるだけ早期に行う必要があります。

症状を持ちながら、室内に入り続けることで本人に苦痛を与え、教育の効果が落ちることはもちろん、当該児童生徒が孤立することで様々な心の傷を負わせてしまうことになりかねません(第10 章 6 節「メンタル面のサポート」参照)。
すでに換気システムの設置について触れましたが、対策には設備投資を必要とするものが出てきます。
その場合、特に公立の学校では財政上の条件が厳しく、思うように対策が進められないことも考えられます。

しかし、たとえ少数でも室内環境によって体調を崩す児童生徒がいる状況は放置できないものです。

都道府県、市町村などの教育委員会に実情を説明して対応を求めなければならない場面も出てくることがあります。

すでに述べたように対策を求める際には VOC の測定データを準備するなど客観的なデータを用いることが大変重要です。

自治体であれば衛生研究所などの測定技術を持った機関を動かすことも必要になってくるでしょう。
10.4. 住宅や職場で発症した場合の相談機関
10.4.1. 保健所
地域保健機関として最も重要なもので、本マニュアルも多くの記述が保健所の担当者による相談業務を念頭に置いています。

保健所は管轄地域の健康に関する様々な業務を行っていますが、保健所の事業については、地域保健法第6 条第 4 号に「住宅、水道、下水道、廃棄物の処理、清掃その他の環境の衛生に関する事項」とあり、また、同法に基づく基本指針では、シックハウス症候群への相談業務が位置付けられています。

また、市町村には市町村保健センターも設置され、住民に対する健康相談事業を行っています。行政機関としての権限を持ち、保健師などの専門家が常駐しています。
10.4.2. 地方衛生研究所
都道府県、政令市には地方衛生研究所が設置され、「衛生研究所」「保健環境センター」「健康安全研究センター」などの名称がついています。これらの研究所では様々な測定項目で機器分析などが行われています。

空気中 VOC 測定の専門家もいて、シックハウス症候群に関する相談に応じてくれるところもあります。

ただし、地方衛生研究所でも室内空気環境測定の専門家がいないところもありますので、全ての地方衛生研究所で同じような対応ができるわけではありません。

あらかじめ電話などで相談内容の概要を伝え、対応してもらえるかを確認しておいた方がいいでしょう。