71;科学的根拠に基づくシックハウス症候群に関する相談マニュアル(改訂版) | 化学物質過敏症 runのブログ

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6.1.3. 内装材からの放散 

室内に直接接する部材は「内装」と呼ばれ、室内との位置関係と機能から、「天井」「壁」 「床」に大別することができます。

内装材は多くの住宅において基本的な汚染発生源ですから、 表 6.1.1.の中でも非常に重要な項目です。 

「天井」は、大きな強度を要しない、下地と表面材からなる比較的単純な構造の部位です。 

一般に人体が触れたり、物理的に損耗する機会は少なく、発生した汚染物質が呼吸器に入る危 険も比較的小さい部位と言えます。

ただ、近年は照明器具をはじめとする様々な機材が取り付 けられるなど機能が多様化してきています。

なかでも暖冷房や換気関係の設備・開口が設けら れる場合には、清掃点検が難しくなったり高温部位が生じるなど管理が難しくなります。 

軽量性、吸音性、耐火性、断熱性などが要求され、クロス(ポリ塩化ビニル・紙・布)、木 質系(無垢(むく)・合板・繊維板)、無機質系(ロックウール板・石膏ボード)などの乾式 工法、漆喰・モルタル・塗装・左官などの湿式工法があります。

乾式では素材からの放散に加 えて接着剤が、湿式では溶剤等が放散源となる場合があります。 

「壁」は外観も多様ですが、それ以上に様々な構造・材質と機能を持つ部位です。住宅の場 合、構造体や配管・配線が内部に収められているほか、断熱・気密・遮音・建具の取付下地な どの機能が限られた空間に圧縮されているため、表面から内部がどうなっているかは専門家で も分かり難いものです。しかも気密と配管・配線、構造材と断熱材などは空間の取り合いとな って本来の機能を果たせない場合がしばしば生じます。また、模様替えなどで新たな汚染が生 じる機会の多い部位でもあるので注意が必要です。クロス(壁紙)、塗壁、木、タイルなどが 主な素材です。 

放散物質の部位別割合は室の形状(部屋の広さや天井高など)や面積規模次第で様々ですが、 図 6.1.4.はある実態調査から、部位ごとに放散量を推定(測定した放散強度と放散面積の積) した結果です。ホルムアルデヒドでは過半が床から発生しているのに対し、トルエンでは壁か らが過半を占めるなど大きな差異が認められるなど一般的な状況を示しています。 

6.1.4.(天井裏等の)構造部材からの放散 

表 6.1.1.に示した「構造躯体(天井裏等)」に分類されているのは、室内に面していない壁 体内部や床下、小屋裏等の空間から汚染物質が侵入してくる状況です。

住宅の外装と内装の狭 間に生じてしまう床下・壁内・天井裏や下屋等は、意図的に作られたものではありませんから しばしば不整形な納まりの悪い空間です。

内装材の裏面やコンセント開口周りには内部結露防 止のために気密層施工が一般化していますし、一部では相当隙間面積(床面積当たりの隙間面 積)の小ささを競う風潮さえありますが、完全に気密にすることはできません。

我が国の住宅 の気密性は近年急速に上昇していますが、目に見えない隙間の封鎖を担保することは難しいことから、リスク管理上は躯体内で発生した汚染物質がこれら様々な経路を通ってある程度は室 内に流入することを前提に発生源対策を講じておくことが合理的です。

建築基準法では、この ルールを厳格に適用して微量でも健康影響が顕著な防蟻剤(床下空間に散布)のクロルピリホ スに対しては使用禁止とする一方、ホルムアルデヒドについては、気密層や通気止めが適切に 設けられ、或いは換気設備などにより圧力差を設けて室内への流入が阻止できる場合には材料 規制を免れることができる例外規定を設けるなどして運用しています。