b. 建築物衛生法
この法律は、1970 年(昭和 45 年)に制定されました。
この法律の適用範囲は、建築物の用途及び 延べ面積等により定められた「特定建築物」です。具体的には、(1)興行場、百貨店、集会場、図書 館、博物館、美術館、遊技場、店舗、事務所、旅館、学校((2)を除く)の用途に用いられる建築物 のうち、延べ面積が 3,000m2以上である建築物、(2)学校教育法第1条に規定する学校で、延べ面積が 8,000m2 以上である建築物です。
1970 年に法律が制定された当時は、浮遊粉じん量、一酸化炭素濃度、二酸化炭素濃度、温度、湿 度、気流に関する空気環境の維持管理基準が規定され、2 ヶ月以内に定期的にこれらの項目の測定が 規定されました。
そして 2003 年の改正において、厚生労働省の室内濃度指針値であるホルムアルデ ヒド濃度 0.1mg/m3 以下が追加されました(巻末資料 4 参照)。
ホルムアルデヒドの室内濃度は、高温高湿度になるほど上昇します。
そのためホルムアルデヒド 濃度の測定は、特定建築物の建築、大規模な修繕、大規模な模様替えが行われ、それから使用開始 後の最初の夏期 6 月1日から 9 月 30 日までの間に実施するよう規定されています。
c. 学校保健安全法
日本における学校環境衛生の取り組みは、1958 年(昭和 33 年)の学校保健法から始まっています。
1964 年(昭和 39 年)に学校環境衛生の基準が定められ、1992 年(平成 4 年)の改正を経て、二酸化 炭素、一酸化炭素、温湿度、気流、浮遊粉じん、落下細菌、熱輻射(熱が空間を伝達する現象)、 教室の換気に関する基準値が定められました。
そして住宅におけるシックハウス症候群と同様に、 学校においても化学物質等による室内空気汚染でシックハウス症候群様の症状を訴える児童生徒が 報告されました。
そこで文部科学省は、2002 年にこの基準を改正し、厚生労働省の室内濃度指針値に準じて、ホル ムアルデヒド、トルエン、キシレン、パラジクロロベンゼンの基準を追加しました。
さらに、エチ ルベンゼン、スチレン、二酸化窒素、ダニまたはダニアレルゲンの基準を 2004 年に追加しました (巻末資料 5 参照)。2009 年 4 月に施行された学校保健安全法では、学校環境衛生の基準がより明 確に法律の中で規定されました。
この基準は、学校教育法第 1 条に規定する、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、大学、 高等専門学校、盲学校、聾学校、養護学校および幼稚園に適用されます。
しかし、厚生労働省が所 管する保育園には適用されないことに留意する必要があります。
d. 事務所衛生基準規則
この規則は、1972 年に定められました(昭和 47 年 9 月 30 日労働省令第 43 号)。
この規則は、労 働安全衛生法(昭和 47 年 6 月 8 日法律第 57 号)に基づき定められた、事務所の衛生基準を定めた厚 生労働省令です。
本規則における事務所とは、建築物において、事務作業に従事する労働者が主と して使用するものです。
但し、工場現場の一部において、ついたて等を設けて事務作業を行ってい るものは本規則の事務所には該当しません。
通常、事務所は、有害物や危険物を取り扱うことのな い作業場といえます。
そのため重篤度の高い労働災害や職業性疾病が発生する可能性は少ないので すが、本規則は、事務所の衛生確保を目的として、環境管理、清潔、休養、救急用具等を定めてい ます。
室内空気汚染に関わるところでは、環境管理として事務室における一酸化炭素と二酸化炭素の濃 度をそれぞれ 50ppm 以下、5000ppm 以下と定めています。
但し、空気調和設備等を設置している事務 所では、浮遊粉じん量、一酸化炭素濃度、二酸化炭素濃度、温度、湿度、気流、ホルムアルデヒド 濃度に関する空気環境の維持管理基準について、建築物衛生法と同じ基準値を定めています。