オフィスビルにおけるシックハウス症候群
日本の 47 都道府県の 315 オフィスとその従業員を対象として実施された調査では、United State Environment and Protection Agency(USEPA)および MM040EA 調査票に基づく 19 症状項目のうち、い ずれか一つ以上がいつもある従業員は 24.9%でした。
最も訴えが多い症状は「不安・過敏・緊張感」 の 8.8%、次いで眼精疲労 8.0%、眼の乾燥や不快感 8.0%でした。
日本以外では、1990 年代から北欧を中心に盛んに実施されています。
フィンランドで実施された 調査では、鼻症状の有症率が 26~22%と最も高く、次いで一般症状が 22%でした。
スウェーデンの調 査では、一般症状の有症率が 10~25%と最も高く、次いで目・鼻・喉の症状が 10~20%でした。
オフ ィスビルでは、換気システムの導入により換気率が上昇し、労働者のシックビルディング症候群の 有症率が低下したという報告があります。
また、換気率の低下がシックビルディング症候群の粘膜 症状のリスク要因となることも報告され、換気の重要性が示唆されています。
その他、自然換気 (窓開け)、機械排気(排気のみ)、機械換気(排気と吸気)、加湿機能のないエアコン(集中冷 暖房)、加湿機能を有するエアコン、蒸気式加湿機能を有するエアコン、気化式加湿機能を有する エアコンなどの換気システムの種類によるシックビルディング症候群の有症率について検討がされ、 加湿機能の有無に関わらず冷暖房設備を有する換気システムはシックビルディング症候群の眼や鼻 の症状のリスク要因となるようです。
換気以外の要因としては、職場での受動喫煙を受ける頻度が 多いほど、また、ビデオ表示端末装置(VDT: video display terminal)を用いる業務時間が長いほど 皮膚、粘膜、一般症状のリスクが増加することが報告されています。
その他、VDT や受動喫煙のよう な労働環境のリスク要因に加えて、心理的ストレスや仕事のデマンド(要求度)・コントロール (自己裁量度)・サポート(上司や部下からの支援)の精神的労働環境とシックビルディング症状 との関連も検討され、要求度の高い仕事と低いサポートの組み合わせがシックビルディング症状の 眼症状のリスク要因となることや、緊張感が張詰めた仕事と低いサポートの組み合わせが喉症状の リスク要因となることも報告され、重要なリスク要因であることが示唆されています。
オフィスビルにおけるシックビルディング症候群については第 7 章 1 節でも詳しく述べていますの で、参考にしてください。
3.2.4. 子どものシックハウス症候群
日本の 5 地区(旭川地区、札幌地区、福島地区、大阪地区、および北九州地区)において、(国) 公立小学校に通う学童を対象に調査を行いました。MM 調査票の学童版である MM080 School では、シ ックハウス症候群の症状がいずれか 1 つ以上ある学童は 3.6~8.5%でした。平均すると約 6%の学童が シックハウス症候群を訴えていることになります。自宅または学校の室内環境改善により、学童の これらの症状を改善することは、公衆衛生学的な視点において重要であるといえます。
中国の 2~6 歳の幼稚園に通う児を対象に実施された調査では、MM 調査票の MM075NA が用いられ、 粘膜、皮膚、一般症状の有症率はそれぞれ 47.8%、19.0%、54.6%と高い割合でした。また、同じ中国 で大気汚染レベルの最も高い地域の 1 つである Taiyuan 市の中学校の学童を対象に実施された調査の 粘膜、皮膚、一般症状の有症率はそれぞれ 33.4%、6.7%、28.6%でした。