10:科学的根拠に基づくシックハウス症候群に関する相談マニュアル(改訂新版) | 化学物質過敏症 runのブログ

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第Ⅱ部 室内環境による健康影響
第 3 章 シックハウス症候群
第3章 シックハウス症候群
3.1. シックビルディング症候群・シックハウス症候群とは
シックビルディング症候群とは、特定の建物の中で、非特異的な症状を呈する状態を言います。

産業衛生、毒物学分野の必須参考図書として、国際的に高い評価を得てきたパティの産業衛生(Patty’s Industrial Hygiene and Toxicology)では、シックビルディング症候群を以下のように定義しています。
① 一般的な感覚器症状(眼、鼻、喉の刺激症状、頭痛、倦怠感、皮膚刺激症状、集中困難、軽度の神経毒性症状)。
② 建物内のある程度以上の人が訴える。
③ 建物を離れると症状が改善する。
④ 多種の要因が重なって原因になることがあり、詳しく環境を調べても原因が良くわからないことがある。
診断においては、症状の出現とともに、環境に原因があると推定されることが必要となります。
また、原因が明らかで医学的に病名がつくもの(アレルギー、皮膚炎、レジオネラ細菌感染、過敏性肺炎、有機溶剤中毒症状など)はシックビル関連病と呼ばれます。

シックビルディング症候群とシックビル関連病ともに同じ室内環境汚染が原因となって起こる可能性があり、この二つを合わせた健康障害が広義のシックビルディング症候群となります。
世界保健機関欧州地域事務局(World Health Organization: WHO 欧州)では、以下の 5 つのクライテリアによりシックビルディング症候群を定義しています。
① 最も頻繁に現れる症状のひとつは眼、鼻、咽頭の刺激症状である。
② 気道下部および内臓を含むその他の症状は頻繁ではない。
③ シックビルディング症候群と在室者の感受性あるいは過剰ばく露との関連は明らかではない。
④ 症状は、ある建築物あるいは特定部分において特に頻繁に出現する。
⑤ 在室者の大多数が症状を訴える。
主な症状としては、図 3.1.1.に示すように皮膚・粘膜刺激症状、頭痛、易疲労、めまい、嘔気、
嘔吐などの精神・神経症状があります。
① 眼(特に球結膜)、鼻粘膜および喉の粘膜刺激症状
② 粘膜の乾燥(唇など)
③ 皮膚の紅斑、じんましん、湿疹
④ 易疲労感
⑤ 頭痛、頻発する気道感染
⑥ 呼吸困難、喘鳴
⑦ 非特異的な過敏症状(鼻汁あるいは流涙、非喘息患者における喘息様症状)
⑧ めまい、吐き気、嘔吐シックハウス症候群は、基本的にはシックビルディング症候群が住宅で生じたものと考えます。
一方、特に住宅で生じる問題として、シックビルディング症候群とは異なる以下のような特徴的な面があります。
① シックビルディング症候群の大部分はオフィスの問題となりますので、オフィスで働く 20~60 歳に生じます。

シックハウス症候群は住宅の問題となりますのであらゆる年齢に生じますが、特に 20 歳未満の若い年齢の有症率が、それ以外の年代の有症率よりも多くなっています。
② シックビルディング症候群は休日に消失することが多いですが、シックハウス症候群は住居のため、毎日の問題です。
③ シックビルディング症候群は、職場の多くの人に生じるために環境の問題として理解しやすいですが、シックハウス症候群は少人数の問題となるため、環境の問題として理解されにくくなります。
いずれにしても室内空気環境の悪化により、皮膚・粘膜刺激症状、頭痛、易疲労、めまい、嘔気・嘔吐などの精神・神経症状が主要症状で、基本的にはその環境を離れるとよくなるものがシックビルディング症候群・シックハウス症候群となります。

シックビルディング症候群・シックハウス症候群の主な症状を図 3.1.1.に示しています。