4:科学的根拠に基づくシックハウス症候群に関する相談マニュアル(改訂新版) | 化学物質過敏症 runのブログ

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・1.1.4. 室内環境因⼦で健康への影響が⽣ずる恐れがありうるもの
人々の健康に及ぼす室内空気質など環境要因の影響についてはさまざまな研究がなされています。
それぞれ専門家が各章で詳しく述べますが、本章では全体像をつかんでいただくために、先に概略を述べます。まず、
①二酸化炭素:人々が呼吸で発散する化学物質として二酸化炭素があり、換気状況の代替指標とされます。

通常はそれ自体で毒性や生理的な影響を示すものではありません。

新鮮な外気に比べ濃度が上がると相対的に酸素不足になり頭痛や耳鳴りなど症状を起こしますので、建築物衛生法や建築基準法などで基準がつくられています。
②室内の燃焼物:暖房器具や調理器具などで使われる石油やガスなどの燃焼によって生じる一酸化炭素、窒素酸化物、粒子物質(Particle Matter、PM2.5 や PM10 など)、多環芳香族炭化水素などがあり、呼吸器系疾患の増加が報告されています。
③喫煙:喫煙そのものに加え、受動喫煙の影響が無視できません。

受動喫煙は喫煙者の呼気や副流煙により室内空気が汚染されます。

数多くの化学物質が含まれ、子どもの喘息や呼吸機能低下やがんなどのリスクの増加が指摘されています。
④様々な化学物質:近年特に注目されているのは、室内にある塗料、接着剤、防腐剤、殺虫剤、防虫剤、香料、可塑剤(“可塑”とは「柔らかく形を変えやすい」の意味で合成樹脂に加えて柔軟性などを改良する添加薬品類の総称、フタル酸エステル類等)、難燃剤などさまざまな化学物質の存在です。

これらの生活の場での化学物質が徐々に揮発して室内空気質が汚染されていく場合があります。
ホルムアルデヒドや揮発性有機化合物(Volatile organic compounds: VOC)などです。
⑤生物学的要因:化学物質ばかりでなく、室内空気質の関係する生物学的要因(真菌やダニアレルゲンなど)はシックビルディング症候群・シックビルディング関連病の原因になりうることが各国の研究で指摘されています。

真菌はどこにでも存在し、真菌自体が病気を引き起こすこともありますが、アレルギー源ともなります。

また微生物の代謝によって生じる揮発性有機化合物(microbial VOC)や細胞膜構成成分(グルカン)が健康に悪影響を及ぼす可能性もあります。

ダニアレルゲンは温暖で湿度が 50%以上になると繁殖しやすく、ダニの死骸や排せつ物がシックビルディング症候群・シックハウス症候群の原因になります。
⑥気流や温・湿度環境など。特に水漏れやダンプネス(湿気)は各国の疫学調査でシックビルディング症候群や喘息との関係が示唆されています。

微生物起源のアレルゲンやカビを増やし喘息を引き起こすなどの健康影響が考えられます。

日本でも厚生労働科学研究など過去の研究ではシックビルディング症候群・シックハウス症候群の原因となる種々の環境要因と症状の関係についてデータが得られています。

私たち、本マニュアル作成に関わっている研究者の多くは平成 12 年度から 22 年度に渡って全国規模で疫学調査を実施しました。

その結果、シックビルディング症候群・シックハウス症候群については詳しく症状をみてみますと、その原因は多岐にわたることがわかりました。
全国規模の疫学調査でわかったことを概要として表 1.1.1.にまとめました(厚生労働科学研究総括分担研究報告書、平成 26年度)。

◎は統計的な有意水準 P<0.05でオッズ比が 2以上で有意のリスクになるもの、○はオッズ比が 1 以上 2 以下で有意水準が P<0.05 のもの、△は P<0.1 の有意水準であったものを示します。

この表 1.1.1.から、シックハウス症候群の原因となる環境要因は、鼻、喉・呼吸器、眼、皮膚、精神・神経症状で、比較して大きな違いがあることがわかります。

北海道から九州まで全国の 6 地域共通でアレルギー歴はシックハウス症候群と有意の関連を示しました。

気候、住宅の気密性などの違いにかかわらず、アレルギー素因はシックハウス症候群のリスク要因になると考えられます。

アレルギー歴は、鼻、喉・呼吸器、眼、皮膚の症状で有意です。

住宅のダンプネスも有意に原因になっています。

一方、化学物質は喉・呼吸器、眼の症状に強く関係しています。

ダニアレルゲンは、鼻、眼の症状と有意の関係が認められました。

精神・神経症状はストレスが原因になっていることがわかります。

性差は皮膚の症状で有意に女性の方がリスクが高くなりました。

化学物質一辺倒のシックビルディング症候群・シックハウス症候群対策では片手落ちであること、症状に沿って環境改善が必要であることを示しています。
表 1.1.1. シックビルディング症状・シックハウス症状と原因となる環境要因
 ⿐ 喉・呼吸器 眼 ⽪膚 精神神経
性(⼥性) ◎ △
アレルギー既往 ◎ ○ ◎ ○
ストレス △ ◎
ダンプネス ○ ○ ○ △ △
化学物質 ◎ ○ ◎ ○
真菌 △
ダニアレルゲン ○ ○
◎,オッズ⽐≧2かつ p<0.05︔○,オッズ⽐>1かつ p<0.05︔△,p<0.1、あるいは個別のモデルでは p<0.05