・統合研究プログラムが目指すところ
統合研究プログラムは、前述のこれまで行ってきた持続可能な開発や将来シナリオといった研究を受けて行っているものです。
社会環境システム研究センターがその中心ですが、低炭素、資源循環、自然共生、安全確保という他の課題解決型研究プログラムで分析される環境問題とともに、福島支部で行われる環境創生も研究対象として含めており、他のセンター、プログラムの研究者がメンバーとして広く参画しています。我々は、環境問題だけが改善し、社会や経済が抱える様々な問題が未解決の世界は、持続可能ではないと考えています。
また、環境問題も、気候変動問題のように超長期、世界全体に関わる問題から、従来の公害問題のように対象となる空間、時間が限定される問題まで、取り扱う時間や空間のスケールが異なります。さらには、持続可能性の問題は、政府や研究者だけでなく、企業や個人などあらゆる主体に関わる問題で、わかりやすく説明することも必要となります。
このようなことから、「統合」研究を実施するにあたって、図に示すような5つの視点を共有することにしました。
1. 環境問題の統合:低炭素、資源循環、自然共生、安全確保、環境創生で対象となる様々な環境問題について、個別に解決するのではなく、同時に解決することをめざす。
2. 環境・経済・社会の統合:様々な環境問題の解決とともに、経済発展、社会が抱える問題の解決もめざす。
3. 都市、地域、国、アジア、世界の統合:上記の統合を、日本だけでなく、アジアや世界で実現できるように、また、日本でも地方や都市などより詳細な領域でも実現できるように、様々な空間スケールで生じる問題を統合的に解決することをめざす。
4. 時間軸の統合:長期的な環境、経済、社会などの将来のビジョンの実現と、短期的に行っている様々な活動や取り組みが整合し、統合されることをめざす。
5.分析手法の統合:定性的な叙述シナリオと統合モデルによる定量シナリオを統合し、わかりやすく具体的なロードマップの提示をめざす。
以上の5つの統合の視点のもとで、以下の3つのプロジェクト(PJ)を構成し、持続可能な社会の実現に向けた研究に取り組んでいます。
PJ1:世界及びアジアを対象とした持続可能シナリオの開発に関する研究
PJ2:適応と緩和を中心とした地域環境社会統合的なロードマップ研究
PJ3:環境社会実現のための政策評価研究
PJ1では、地球全体やアジアを対象とした持続可能性について研究を行います。
また、アジアにおける取り組みとしては、経済発展と環境保全をどう両立させるかということを、アジアの研究者と一緒に検討していきます。
筆者らが中心となって行っているアジア太平洋統合モデル(AIM)の開発に携わっているアジア主要国の研究者に対して、持続可能社会の構築に向けて、先に示したSDGsの17のゴールのうち、どのゴールの優先順位が高いかを聞いてみたところ、教育(ゴール4)や健康と福祉(ゴール3)を重要と考えている研究者が多い結果となりました。
こうした結果は、持続可能な社会の実現に向けて、社会全体の底上げが重要であると認識されているといえます。
アジア各国が抱える様々な課題に対して、日本の知見をどのように共有するかも重要な課題の1つと考え、モデルの共有や人材育成などを行いたいと考えています。
PJ2では、日本を対象に、気候変動の緩和策、適応策の両方を踏まえた低炭素社会の実現を出発点に持続可能な社会の実現に向けて、国や都市などどのような方策を検討することが必要かについて取り組んでいます。
ここでも、統合評価モデルというツールを用いて定量的な分析を行うとともに、研究成果の社会実装もめざした社会モニタリングも行い、統合的な施策評価と実施計画の立案検討の枠組み構築をめざします。
PJ3では、空間的なスケールで区切られたPJ1とPJ2に対して横断的に取り組むプロジェクトで、持続可能な社会に向けた地域及び生活を対象とした計画策定手法の開発、及び国・地域を対象とした法制度の提示をめざしたプロジェクトとなっています。
以上の3つのPJが、連携して持続可能な社会の実現に向けた取り組みについて、研究を進めています。2050年やさらにその先を見据えて、人々が暮らしてみたいと思えるような社会、環境、経済の姿とともに、そうした姿を示す評価手法について提示することを目指しています。
また、実現性という観点から画に描いた餅で終わらせないように、常に社会実装を念頭に置いて研究に取り組むことをメンバー全員が心がけています。
runより:(o´・ω・)´-ω-)ウン、長い上に良く解からないね。
でも環境にとって大事な事なんですね。