http://www.nies.go.jp/kanko/news/36/36-1/36-1-02.html
統合研究プログラムがめざすもの
国立環境研究所でこれまでに取り組んできた持続可能性研究とこれから
特集 気候変動の緩和・適応から多様な環境問題の解決に向けて
【シリーズ研究プログラムの紹介:「統合研究プログラム」から】
増井 利彦
国立環境研究所では、2016年度の中長期計画から、課題解決型研究プログラムの1つとして新たに統合研究プログラムが開始されています。「統合」という新しいキーワードが使われていますが、これまでにも環境問題を議論する上で使われてきた「持続可能性」を本文に示す5つの視点でとらえなおし、持続可能性に関連する様々な断面を「統合」しようとしています。
国立環境研究所でこれまでに行われてきた持続可能性を対象とした研究
「統合プログラム」の説明の前に、これまでに国立環境研究所において行われてきた持続可能性に関する研究について振り返ってみます。
2011年度から2015年度に行われた第3期中期計画では、次世代の環境問題に先導的に取り組む研究課題である先導研究プログラムの1つとして、「持続可能社会転換方策研究プログラム」を実施し、2050年における持続可能な日本の社会の姿を、定性的、定量的に示しました。
このプログラムでは、環境問題よりも社会、経済といった点に注目し、持続可能社会の基盤となる社会像とはどのようなものかを検討し、「ゆたかな噴水型社会(日本のあらゆる資本を効率的に用いて、経済成長につなげていく社会)」と「虹色のシャワー型社会(高い経済成長ではなく、ソーシャルネットワークなど人々の相互支援で成長を補う社会)」という2つの異なる社会像を提示し、どちらの社会でも持続可能な社会を実現できることを示しました。詳しくは、国立環境研究所研究プロジェクト報告第120号(http://www.nies.go.jp/kanko/tokubetu/setsumei/sr-120-2016b.html)をご覧下さい。
また、2006年度から2008年度には、「中長期を対象とした持続可能な社会シナリオの構築に関する研究」を行い、環境省で行われた超長期ビジョン検討に対して様々な情報提供を行いました。
その成果は、国立環境研究所特別研究報告第92号(http://www.nies.go.jp/kanko/tokubetu/setsumei/sr-092-2009b.html)として報告しています。
このほかにも、IR3S(サステイナビリティ学連携研究機構)にも協力機関として参画し、これらの研究を通じて、持続可能性を将来ビジョンやシナリオ、指標といった視点で検討し、どうすれば持続可能な社会を実現できるかということを分析してきました。
さらに遡ると、国立環境研究所の前身の国立公害研究所においても、1980年代からどのような環境問題が社会の変化とともに将来重要になるかといったことが、所内の組織の枠を超えて議論されてきました。