(2)早期発見の試み
低体重など,出産にかかわるトラブルはさまざまな障害の危険因子なので注意が必要だろう。
現在,なるべく早期に自閉症などの発達障害のリスクのある子を発見しようとする臨床的試みは,米国を中心に日本でも精力的に行われているようである(M-CHAT=Modified-Checklist for Autism in Toddlers など)。
以前から自閉症児は,生まれてから 1 年後,頭の大きさが異常に大きくなるといわれており、注意できる。瀬川らの睡眠パターンや這い這いの上達を観察する方法も,自宅で赤ちゃんの様子を見ていればよいので簡便で誰でもできる。
素人判断では必ずしも 100% 相関するわけではないが,おかしいと思えば専門医に診てもらうきっかけとなるので薦められる。
(3)療育法の開発には成功例の蓄積を
療育については,脳高次機能の神経科学の立場からは,幼児期,小児期の脳(ことにシナプス結合)の驚くべき可塑性(やわらかさ)が頼みだ。特別支援施設の職員の方々の努力が期待される。
まとまった形としての療育法は,1982 年,佐々木正美(川崎医療福祉大学)らが先駆的に米国から TEACCH を日本に導入したが,その後も試行錯誤の連続で改良されてきたものと思われる。
数多くの書籍が出ており情報量は多い。
脳神経科学的にいえば,「未発達で機能しない特定の神経回路を,どうやって正しく作り上げ働かせるか」という課題で,成人の脳神経機能障害のリハビリと同様,くりかえし刺激・訓練による広い意味での学習によって新しいシナプスの形成を促し,バイパス的に神経回路をつなげるしかないのであろう。
小児期のシナプス形成は本来非常に活発で,高年齢での老化に対抗するリハビリより,はるかに改善度はよいであろうことは議論の余地はない。
問題は子どもごとに違う個性,症状の多様性で,それに対応し克服するのは,昔から臨床医学では行っている「1 例でも症例報告として記録しておく」というノウハウが参考になるであろう。
たまたま上手くいった成功例の,他の子どもへの応用が貴重である。
臨床の経験はないのではっきり評価はできないが,「特別何もせず,“普通の” 生活を送っているうちに,大人になって “自然に” 治った」という例が , ことに ADHD では稀でないという記載があるのは,脳神経科学的には脳シナプスの可塑性,ホルモン系の影響(その 2 次,3 次効果)などから当然ありうることで,心強い。
「発達障害児の脳も発達する」のである。
(文中,敬省略。下につづく)ものが非常に多い。
runより:長い記事でしたがお疲れ様でした((。´・ω・)。´_ _))ペコ
下巻はしばらくしてから掲載予定です。