自閉症・ADHD など発達障害増加の原因としての環境化学物質12 | 化学物質過敏症 runのブログ

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5     脳高次機能の脆弱性と統合失調症
(1)化学物質によるかく乱に弱い胎児期の脳の発生・発達
「環境ホルモン」など化学物質の脳・神経系に対する影響が憂慮されるのは,脳が “超” 複雑な化学物質からなる精密機械だからだといえる。階層性,多様性および冗長性を伴ったヒト脳のもつ構造と機能の複雑さについては,強調しすぎることはない。
1 個の受精卵から,おびただしい数の遺伝子が秩序正しく,つぎつぎに発現し,蛋白質が合成され,それが働いてさまざまな種類の細胞が分裂・分化していき,脳がつくりあげられていく。
このとき細胞と細胞の間での情報のやりとりをしているのは,ホルモンそのものや “神経ホルモン” と呼ばれるホルモン様物質,多種の神経伝達物質である。

また発達期の脳は,自発的または外的な刺激によって生じるシナプス活動に依存してシナプス・ニューロンの選択淘汰が行われ,機能発達をとげていく。
化学物質に対し脆弱な脳の部分については既にまとめている。

要するに,ホルモン “様” 化学物質,神経伝達物質とその受容体系がありとあらゆるところで働いているのが脳・神経系であり,他の臓器よりも発生・発達期,いや成熟した後でも外界からの化学物質によって脳・神経系がかく乱されやすい。

近頃問題になっている,本人に合わない抗うつ薬を飲まされた患者に見られるさまざまな副作用は,治療薬(化学物質)の開発において,治療効果のみで副作用がでないようにすることが,いかに困難かを示している。精密化学機械であるヒトの脳は化学物質の侵入に弱いのである。
このようなかく乱から脳を守るために,成熟した脳では血液脳関門が発達し,有害な化学物質の血液系を通しての侵入を “関所” のように防いでいる。

ところが胎児期にはこの防御システムはなく,乳児,幼児期までこの関門の機能は不十分で多くの有害物質を通してしまう。胎児期・乳幼児期が要注意であるのはこのためでもある。
発達障害で異常があるとされる高次機能を支える神経回路には,大脳皮質の領野間など距離的にはなれた部位を結ぶ,比較的長い軸索による結合が必要である。こうした数 cm 以上の長い軸索が莫大な数にのぼることは,脳の皮質ニューロンが主に脳の表面の薄い灰白質を構成しているだけで、
内部の大部分を占める白質は,髄鞘で保護された細い軸索の束からなっていることでも理解できる。
もともと長い軸索によるシナプスの特異的な形成と維持には,複雑な遺伝子群の協調した発現が必要である。

同様に重要なのは,シナプス結合を維持する分子メカニズムが発達の期間を通じて安定に働くことである。

神経終末部がことに脆弱である。活動の維持に必要な神経伝達物質放出系,それを支えるミトコンドリアなどエネルギー供給系,シナプス結合を実際に行っている接着分子群などに必要な蛋白質,分子群の補給は,すべて軸索輸送に頼っている。

ことに長い軸索の先端にある神経終末では,補給線が長いために継続的輸送はより困難で,供給が止まればシナプスは脱落しやすい。仕組みのいかんによらず,それを可能にする特別な遺伝子発現レベルの調節は,時間的空間的にさらに精緻になり,脆弱性は増すことが予想できる。