・しかし原発事故で人々は基準値を超える放射線を被ばくするようになった。その被害が出てくるのは今後数年間を過ぎてからになる。
国は事故が起こるや否や、平時の基準値は安全サイドに立ったもので、低線量で影響がでるというはっきりした証拠は確立されていないと言い出し、緊急事態として実質基準値を20倍に緩和。
除染などの対策で数~数十年かけて平常時の基準値がクリアできるように戻していく方針だ。
一方、ケータイの電磁波は、発がん性などの有害性はシロから徐々に灰色が濃くなってきているが、まだ決着はついていない。
しかしこの10年くらいの間にケータイの普及で人々の頭部への被ばく量が急速に増加。もし有害だとしたら、すでに影響が出始めており、今後拡大すると予想される。
しかし国は、危険性がはっきり証明されたわけではない、という判断で、使用規制や注意勧告などの対応はとっていない。
どちらにも共通するのは、本当に危ないとした場合、どれくらいのばく露で危険性がどの程度あるのかという具体的な情報が、国民に伝えられていないことだ。
リスクが現実性を増せば増すほど、科学的にははっきりしない点が強調されていく。
国際機関や政府が定める基準値は、科学的な安全評価に基づいて線引きされるのではなく、現実のばく露状況に合わせてそれをクリアできるように調整されていることなども共通点と言えるだろう。
一番姑息なことは、企業や関連業界が裏でお金に物を言わせて科学的な結論が出ることを遅らせようとすることだが、原発でもケータイでも同様の事態が起きており、我々としては監視の目を光らせ続ける必要がある。
◇世界最大のデンマーク疫学調査で「脳腫瘍は増えない」への疑問
今年10月20日に世界最大規模の携帯電話の発がん性に関する疫学調査の結果が発表された。
初期の携帯電話の契約者を対象に、発がんの増加を調べ続けているコホート調査というものだ。
デンマークで携帯電話の販売が始まった1982年から1995年の間に携帯電話会社と契約関係があった35万8千人を対象にしたもので、これまで2001年と2006年と5年ごとに結果が公表されており、今回3回目として2011年に最新の追跡状況が論文として発表された。
論文より抜粋した脳腫瘍リスクのデータ一覧
この3回の結果のどれも、携帯電話の契約者グループのがん発生率(がん全般でも、脳腫瘍に限っても)は、非契約者グループの発生率と比べて統計的な有意な差はない、という結論になっている。
2006年の2回目の論文は、今年6月のIARCの発がん評価にも提出され、検討対象となった。
委員の中にはこの最大規模のこのデンマークの調査で差が出ていないのだから、ケータイに発がん性があるという証拠は不十分、という意見を主張した人もいるほどだ。
しかしこの研究デザインを良く見てみると、わざと影響が出にくくしているのではないかと疑わせるような点が多い。
◇ケータイ不使用者グループの8割は使用者
通常コホート研究という疫学調査では、はじめにばく露グループと非ばく露グループに分けて、その両方のグループで病気の発生率に差が出るかを追跡調査していく形が基本だ.
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