https://www.jstage.jst.go.jp/article/toxpt/41.1/0/41.1_MS1-3/_article/-char/ja/
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環境中化学物質が小児に与える影響の検討~小児分子疫学的研究~
*辻 真弓1) 2), 川本 俊弘1), Fumio MATSUMURA2)
1) 産業医科大学 医学部 産業衛生学 2) カリフォルニア大学デービス校
公開日 20140826
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抄録
【目的】乳幼児のアレルギー疾患の罹患者数の増加には環境中の有害物に対する小児の脆弱性が大きく関与していると考えられている。
しかしながらアレルギー発症・増悪に関与する遺伝因子や環境因子、詳細な発症機序については未だ不明な点が多く、新性児・乳幼児を含む小児を対象とした研究が国内外で求められている。
よって我々は小児のアレルギー性疾患に関与する因子の関係を明らかにし、関連するバイオマーカーを探索する目的で分子疫学的研究を開始した。
【方法】2009年~2010年に乳幼児203名をリクルートし、質問票調査(既往歴、喫煙歴、住所等)並びに血液を採取した。
血液を用いて食物・吸入抗原特異的IgE抗体値、炎症性サイトカインのmRNA発現量の測定を行った。
さらに203名中、喘息児15名、健常児15名の計30名(平均月齢 22.7ヶ月)を抽出し、PCB異性体濃度を測定した。
【結果1】喘息児においてのみIL-8 mRNA発現量と一部のPCB異性体 (#163+164、#170、#177、#178、#180+193) 濃度との間に濃度依存的な関係が有意に認められた。
【結果2】幹線道路から50m以上離れた場所に住んでいる児と50m以内に住む児を比較した場合、50m以内に住む児のIL-22 mRNA発現量は有意に高い値を示し、特にこの傾向は食物抗原特異的IgE抗体陽性群において強く認められた。
また高PCB濃度群において、食物抗原、特に牛乳特異的IgE抗体陽性者の方がIL-22 mRNA発現量が有意に高く認められた。
【結論】乳幼児と環境因子曝露を推測するバイオマーカーとしてIL-8, 22が有効で、特にアレルギー児において両者はよりsensitiveなバイオマーカーとなりうる可能性を示唆した。
現在これらの研究結果を確認し、メカニズムを明らかにするためのin vitro、in vivo実験を国内外の研究者と共同で行っている。