母乳を介したナノ銀曝露が仔の情動機能へ与える影響評価 | 化学物質過敏症 runのブログ

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https://www.jstage.jst.go.jp/article/toxpt/41.1/0/41.1_P-19/_article/-char/ja/
母乳を介したナノ銀曝露が仔の情動機能へ与える影響評価
*森下 裕貴1), 吉岡 靖雄1) 2), 瀧村 優也1), 野尻 奈央1), 高雄 啓三3) 4), 田熊 一敞5), 吾郷 由希夫5), 角田 慎一2) 6), 松田 敏夫5), 宮川 剛3) 4), 東阪 和馬1) 2), 堤 康央1) 6)

1) 大阪大学大学院薬学研究科 毒性学分野 2) 医薬基盤研究所 バイオ創薬プロジェクト 3) 藤田保健衛生大学総合医科学研究科 システム医科学研究部門 4) 大学共同利用機関法人自然科学研究機構生理学研究所 行動様式解析室 5) 大阪大学大学院薬学研究科 薬物治療学分野 6) 大阪大学MEIセンター

公開日 20140826  
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抄録

胎児期や乳児期といった発達期の脳は、化学物質に対して感受性が高いことが知られており、妊娠期や授乳期の化学物質曝露が、こどもの神経系の発達に悪影響を与える可能性が指摘されている。

本観点から我々は、100 nm以下の素材であるナノマテリアルに関して、こどものこころへの影響に着目したナノ安全科学研究を推進している。

当研究室ではこれまでに、10 nmのナノ銀(nAg10)を母マウスが経口摂取すると、母乳を介して仔へ移行する可能性を見出している(本会の別演題にて発表)。

従って、母乳を介してnAg10に曝露した乳幼仔への生体影響の精査が必要不可欠と考えられる。そこで本研究では、nAg10を経口摂取した母マウスに母乳育仔された乳幼仔の脳への影響に関して、行動毒性学的観点から評価した。

母マウスに、出産日から21日間、nAg10、または、イオンのコントロールとして銀イオンを、現実に想定されるナノ銀の曝露量の100倍程度を最大用量として連日経口投与した。

これら母マウスに、投与期間を通じて母乳育仔された雄仔について、経週的に体重を測定すると共に、11週齢から、オープンフィールドテスト、高架式十字迷路、ソーシャルインタラクションテスト、強制水泳テストにより、自発運動量、不安様行動、社会的行動、うつ様行動を評価した。

その結果、対照群である水投与群と比較して、出生時から17週齢まで、nAg10投与群、銀イオン投与群の体重に有意な変化は認められなかった。

また、いずれの行動テストにおいても、群間のスコアに有意な変化は認められなかった。

従って、本実験での母体の曝露量において、nAg10や銀イオンの授乳期曝露は、仔の成長、自発運動量、不安様行動、社会的行動、うつ様行動には影響を与えない可能性が示された。

現在、仔の認知機能にも着目し、nAg10の授乳期曝露が仔の脳へ与える影響について、より詳細に評価している。