http://mainichi.jp/sunday/articles/20170123/org/00m/020/001000d
「食の植民地」ニッポン
集中連載/2 カドミウム、ヨーネ菌…食品安全のダブルスタンダード
かねて環太平洋パートナーシップ協定(TPP)からの離脱を表明していたトランプ新大統領。
戦略の練り直しを迫られる日本にとって、食の安全を根本から見直す好機でもある。連載第2回では、輸出入における“ダブルスタンダード”の盲点をあぶり出す。
1月20日に誕生したドナルド・トランプ新大統領は、昨年11月の選挙直後に有権者との公約として、『「米国を再び偉大にする」ための就任後100日行動計画』を発表している。
その中に「米国の労働者を守るための七つの行動」という項目があり、そこに「TPPからの離脱を表明する」と明記されていた。
ところが日本国内では、その後も国会の特別委員会で、TPP承認案と関連法案の審議が続けられてきた。
安倍晋三首相はトランプ大統領誕生に伴うTPP発効の実現性について「日本が意思表示をすることが大事」などと答弁し、口癖のように「政治は結果がすべて」と繰り返してきた態度とは裏腹に、まるで国家の示威行為のために審理が進められてきたようなものだ。
その衆参両院の特別委員会では「食の安全」について多くの質疑があった。
その内容のほとんどは、本誌で一昨年末より私が伝えてきたものと重複する。
少し振り返ると、例えば、輸入牛肉に含有される「成長促進ホルモン剤」。(注1)
日本の黒毛和牛は、育成28~30カ月ほどで食肉として出荷される。
ところが米国ではホルモン剤の投与によって18~20カ月で出荷できる。
それだけ育ちが早い上に、体重も増し、雄にも雌のように脂肪がついて肉が軟らかくなる。餌代の節約にもなり、実に効率的だ。
ところが、欧州ではホルモン剤による女性の性周期の乱れや免疫力の低下など、人体への影響が指摘され、1988年にはホルモン剤の使用を禁止し、翌89年からは使用牛肉の輸入も全面禁止に踏み切っている。
あるいは、米国産の豚肉に使用されている飼料添加物「ラクトパミン」。
興奮剤、成長促進剤としてのドーピング効果があり、主に赤身肉を多くさせる目的で、米国では豚の肥育最終段階、出荷前の45~90日の間に餌に混ぜて使用される。
ところが、こちらも人体への影響を無視できないとして、欧州連合(EU)、中国、それにロシアも国内使用はもとより、使用された食肉の輸入を禁止している。(注2)
では、日本はどうかというと、ホルモン剤もラクトパミンも国内での使用は認められていない。
禁止薬物である。
それが米国産の牛肉や豚肉には、使用も含有も認めているのだ。
つまり、食の安全に国産と外国産とでダブルスタンダードがあることになる。“一国二制度”あるいは米国産食肉に対する“治外法権”を認めていることになる。
また、遺伝子組み換え作物の表示についても質疑に挙がっていた。
米国のトウモロコシ、大豆の作付けの約9割が遺伝子組み換え品種であり、その米国にトウモロコシ、大豆の大半を依存する日本では、避けては通れない問題である。
runより:ちょっと長い記事です。