・https://www.jstage.jst.go.jp/article/toxpt/43.1/0/43.1_S7-2/_article/-char/ja/
我が国の農薬評価においてADI設定根拠となった毒性試験について
*小野 敦1)
1) 国立医薬品食品衛生研究所 安全性予測評価部
公開日 20160808
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抄録
農薬の登録申請においては、毒性に関する試験成績として複数の動物種を用いた様々な毒性試験が要求されている。
それらの試験成績は、農薬がその目的に応じて有効かつ安全に使用されるための基準を設定するために使用される。
今日、要求されている試験や動物種は、ヒト健康影響を未然に防止するために必要と考えられる評価項目を可能な限り網羅することを念頭に経験的に決められてきたものであるが、実際の評価においては、NOAEL等の評価値算出に用いられる試験はそれらの一部であり、全ての農薬について要求される全ての試験が常に必要であるわけではない。
近年、特にイヌ長期(1年間)試験やマウス発がん性試験の必要性について議論となっており、特にイヌ長期試験については欧米の評価機関では提出が必須とはされていない。
農薬の安全性評価においては医薬品等と異なりヒト臨床データを用いることが困難である。
そのため、動物試験のみの結果から安全性を担保する必要があり、最も感受性の高い動物種や発現する毒性が予め予測出来ない状況において、むやみに試験を削減することにより、ヒト健康被害が起きては本末転倒である。
しかし、過去数十年の安全性評価により蓄積されてきた知見をもとに、評価の目的のため必要となる試験選択について科学的な見地から再検討を行う時期に来ているのではないだろうか。
本発表では、食品安全委員会より公開されている農薬評価書をもとに、イヌ長期毒性試験もしくはマウス発がん性試験を根拠として1日摂取許容量(ADI)設定が行われた農薬について、それらの試験結果が得られなかった場合のADI設定への影響についての解析結果やそれらの農薬についてのJMPR等海外評価機関における評価状況をもとに、それらの試験の必要性や省略の可能性について議論を行う。