室内環境における準揮発性有機化合物の多経路曝露評価に関する研究 | 化学物質過敏症 runのブログ

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https://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD00.do?resrchNum=201428017B

文献番号
201428017B

報告書区分
総合

研究課題
室内環境における準揮発性有機化合物の多経路曝露評価に関する研究

課題番号
H24-化学-指定-007

研究年度
平成26(2014)年度

研究代表者(所属機関)
神野 透人(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部第一室) 

研究分担者(所属機関)
齋藤 育江(東京都健康安全研究センター 環境保健部)、小島 弘幸(北海道立衛生研究所 理化学部)、武内 伸治(北海道立衛生研究所 理化学部)、上村 仁(神奈川県衛生研究所 理化学部)、香川 聡子(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部第一室)、金 勲(キム フン)(早稲田大学 理工学術院)、金 ヒョンテ(早稲田大学 理工学術院) 

研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 化学物質リスク研究

開始年度
平成24(2012)年度

終了予定年度
平成26(2014)年度

研究費
 

研究者交替、所属機関変更
  
  

研究報告書(概要版)



概要版
研究目的:
 室内は人が日常生活の大半の時間を過ごす空間であり、揮発性有機化合物への曝露という観点から室内空気は食品・飲料水や大気に匹敵する、極めて重要な曝露媒体であると言える。

一方、準揮発性有機化合物 (SVOC) と総称される比較的沸点の高い化合物の曝露についても室内環境中の媒体が重要な役割を担っていることが最近の研究で明らかにされつつある。

SVOC の場合にはガス状の他に、大部分が浮遊粒子状物質やハウスダストに分配/吸着した状態で存在し、存在形態の差異に依存して異なる経路 (経気道あるいは経口、経皮) で生体に取り込まれると考えられる。

そこで、室内環境中のSVOCについて、存在形態ごと、換言すれば曝露媒体ごとの濃度を測定し、様々な経路からのSVOC曝露量を正確に評価するための手法を確立することを主要な目的として本研究を実施した。
 

研究方法:
 平成24年度に室内空気中のガス状および粒子状SVOCの分別採取・測定方法並びにハウスダスト中のSVOC測定方法について検討を行い、PM10、PM10-PM2.5およびPM2.5のサイズの粒子に吸着したSVOCとガス状のSVOCの同時・分別サンプリング法を確立した。

平成25年度には20家庭においてSVOC濃度調査の実証試験を実施し、最終年度の平成26年度は、地方衛生研究所の協力の下に50家庭で室内空気中およびハウスダスト中のSVOC濃度関する全国規模の実態調査を実施した。
 

結果と考察:
 室内空気中からDimethyl Adipate (最高濃度7.0 μg/m3)、Di-isopropyl Adipate (6.5 μg/m3)、Dibutyl Phthalate (3.6 μg/m3)、Diisobutyl Phthalate (3.0 μg/m3)、Bis(2-ethylhexyl) Phthalate (1.3 μg/m3)およびDBA (1.1 μg/m3) などのフタル酸エステル類およびアジピン酸エステル類が比較的高濃度で検出された。

また、室内空気中からピレスロイド系殺虫剤であるPhthalthrinなどのピレスロイド系殺虫剤や2,4,6-TribromophenolおよびHBCDなどの臭素系難燃剤も検出されたが、いずれも1 μg/m3以下の濃度範囲であった。
 

結論:
 本研究でガス状および粒子状SVOCの分別採取・測定方法を確立し、全国調査に適用した結果、検出されたSVOCの多くがPM2.5と呼ばれる<2.5 μmの粒子に吸着した状態で存在していることが明らかになった。

したがって、室内空気中のPM2.5は、物理化学的な性状から推定される以上にSVOCの空気中の最高濃度を増大させるとともに、肺深部にまで到達可能な状態でSVOCを空気中に存在させる、言わばCarrierとしての役割を果たしていることが推察される。

また、顔料由来と考えられるPCBを含む多様なSVOCがハウスダストに吸着して室内環境中に存在することが明らかになったことから、ハウスダストを媒体とした経口曝露量の評価手法を確立するとともに、今後は食品や飲料水などからの寄与も考慮に入れた精緻なリスク評価が必要になるものと考えられる。 

公開日
2015年06月12日