受動喫煙の防止を進めるための効果的な行政施策のあり方に関する研究 | 化学物質過敏症 runのブログ

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文献番号
201412026B

報告書区分
総合

研究課題
受動喫煙の防止を進めるための効果的な行政施策のあり方に関する研究

課題番号
H24-循環器等(生習)-一般-015

研究年度
平成26(2014)年度

研究代表者(所属機関)
大和 浩(産業医科大学産業生態科学研究所 健康開発科学研究室) 

研究分担者(所属機関)
太田 雅規(産業医科大学産業生態科学研究所 健康開発科学研究室)、中村 正和(大阪がん循環器病予防センター 予防推進部)、欅田 尚樹(国立保健医療科学院 生活環境研究部)、河井 一明(産業医科大学産業生態科学研究所 職業性腫瘍学研究室) 

研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究

開始年度
平成24(2012)年度

終了予定年度
平成26(2014)年度

研究費
 

研究者交替、所属機関変更
  
  

研究報告書(概要版)



概要版
研究目的:
  「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」は、締約国に対して法律により一般の職場だけでなく、レストランや居酒屋などのサービス産業も含めたすべての屋内施設を全面禁煙とすることを求めている。

諸外国では受動喫煙防止法がすでに施行され、その直後から国民の心筋梗塞、呼吸器疾患などの入院数が減少したことが報告されている(Circulation. 126: 2177, 2012)。

わが国では、2010年2月、厚生労働省健康局長「受動喫煙防止対策について」(健発0225第2号)で「少なくとも官公庁と医療機関は全面禁煙とすべき」と述べられ、地方自治体では建物内を全面禁煙とする動きが広まり始めたところである。  

本研究の第1目標は、平成22年の健康局長通知後の121自治体(47都道府県庁、46県庁所在市、5政令市、23特別区)の対策を統一されたフォーマットで追跡調査し、結果をリアルタイムでフィードバックすることによって、対策が遅れている団体の自主改善を促すことである。  

第2の目標は、神奈川県と兵庫県で実施された民間施設を含む受動喫煙防止条例をより良い内容で成立させる自治体を支援し、「サービス産業においても屋内施設の禁煙化が必要」という社会規範を作ることである。  

最終的には、受動喫煙防止対策に関する情報と事例の集積により「たばこ規制枠組条約」で求められている受動喫煙防止法の成立に寄与し、国民の喫煙・受動喫煙関連疾患を防止することを目標とする。
 

研究方法:
 全国の主要な121地方自治体の受動喫煙対策について下記の調査を行った。 ・優良な自治体の調査(議会部分も禁煙、敷地内全面禁煙、勤務中の禁煙、男性喫煙率の分析) ・喫煙室や屋外喫煙コーナーからの漏れ・拡散を微小粒子状物質(PM2.5)とガス状物質で評価 ・喫煙者の衣服から発生するタバコ臭(3次喫煙)の評価 ・条例化における首長、議員の役割、働きかけの方法等の検討 ・喫煙・受動喫煙による遺伝子障害の指標の検討 ・嗅ぎタバコなどの新規タバコ製品および関連製品とその課題について情報収集
 

結果と考察:
 全国の主要な121自治体の7回目の調査を実施し、団体ごとの優劣の比較が可能な一覧表の作成、グッドプラクティスの収集を行い、各団体にフィードバックした。

特に、最終年度(3年目)は、職場の全面禁煙化と2010年の大幅値上げの前後の喫煙率の変化を詳細に統計分析し、各イベントの前後で喫煙率が有意に低減したことを明らかにした。

また、屋外の喫煙場所からタバコ煙が屋内に流入することについても評価し、出入口付近の喫煙場所は極力離すべきことのエビデンスの集積も行った。  

地方自治体での受動喫煙防止条例の検討過程を分析し、知事のリーダーシップの下での行政の主体的な取組が必要であること、タバコ産業やサービス産業からの政策決定者や行政へのロビー活動への対応策を具体的に検討し、これから検討する自治体の担当者に呈示することの重要性について明らかにした。  

酸化的DNA損傷の代表的なマーカーである尿中8-OHdGは、喫煙者が禁煙した際には低下し、喫煙の再開によって有意に増加することが明らかとなり、今後、受動喫煙に曝露されている労働者の生体影響指標として応用できる可能性があることを示した。  

副流煙を曝露した3種類の異なる洋服の生地から、タバコ臭の要因として知られるアルデヒド類などの化合物が一定の割合で拡散する「残留タバコ成分」の現象を実験的に確認した。  

以上の成果を(http://www.tobacco-control.jp/ )に公開した。
 

結論:
121地方自治体の喫煙対策と喫煙率を分析した結果、①職場の建物内・敷地内禁煙化、②勤務中の禁煙、③公用車の禁煙化、④違反喫煙者への警告、に取り組むことで、喫煙率が短期間で大幅に低下することが3年間の調査結果から判明した。結果は、日本産業衛生学会、日本公衆衛生学会、日本衛生学会の報告、シンポジウムとして発表した。

121自治体の喫煙対策担当者にメールマガジンを配信しており、今後も全国の自治体の優良事例・対策前後の経過を積極的に開示することで、自治体の喫煙対策の向上が期待出来る。

また、本研究の内容は、禁煙治療薬に関わる製薬メーカーにも提供しており、喫煙・受動喫煙防止対策に関する無料のリーフレットやチラシが複数作成され、拡散された。  

日本循環器学会や日本呼吸器学会、日本内科学会など24の医科・歯科系学会で構成される禁煙推進学術ネットワークにも情報を提供し、平成26年に改訂されオフィシャルブックレットに本研究成果が取り上げられた。

24学会を通じて多くの医療関係者の啓発にも貢献した。 

公開日
2015年09月11日