総説:化学物質過敏症5 | 化学物質過敏症 runのブログ

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免疫学的検査
McGovernは食物と化学物質過敏症の患者の研究で、免疫系反応の測定を進めてきた。

T細胞亜分画測定、helper/supressor比、免疫グロプリン、免疫複合体の検査などである。

しかしMCSの臨床病態と免疫反応の個人での異常の関連は知られていないし、説得力のあるデーータを示したレポートの著者もいない。
国際免疫学会はWHOとの協同研究として免疫検査の実施を勧告した。

これはRittsによりまとめられた。

免疫学的検査は特定の異常が予想される病気の比較的小数にのみ、臨床的に有効なのである。

T-, B-リンパ球サプセットは疫学的見地からは非常に役立つものかも知れないが、このMCSの患者では診断に役立っとみるべきではない。
免疫反応検査は高価であり、またわれわれの見地からすると時に誤解を招くことすらある。

食物アレルギーの患者評価には役立っかも知れないが、一般に、MCSの可能性の患者のルーチンの検査としては確固たる役割はない。

環境チャレンジテスト(負荷テスト)
さきに述べたようにenvioronmental unitーよ汚染物質や合成化学物質がない状態で、生活環境の化学刺激物質で患者にチャレンジテストを行うために作られたものである。

WilliamReaは環境物質に起因した患者に関するいくっかの出版物を出した。いくっかの食物や殺虫剤、揮発性物質、芳香剤、色素、合成繊維といった化学物質や天然ガスが関連すると考えられている徴候や症状は非常に多い。そのような患者は起因物質に暴露されたときやホルムアルデヒド、有機塩素化合物、フェノールといった化学物質を吸入したときに症状が再発する。個々の例ではチャレンジテストにおいて血清補体価、好酸球、T リンパ球、免疫グロプリンの異常が認められる。
しかし、現在の環境チャレンジテストは十分計画、コントロールされた臨床試験に比べ特異性、敏感性の点で、十分有効とはいえない。

検査物質の暴露量と患者の吸収量はよく分からないし、これらの物質に暴露された個々の患者における免疫学的パラメータの意義がはっきりしない。

この形式での環境チャレンジテストは研究用プロトコールの一部分として以外は現在の所個々の患者の評価には向かないように思われる。

MCS診断法のまとめ
では、MCSの患者確定診断にはどんな方法が有効か? かかる患者の問題の本体を決めるには詳しい病歴、身体所見、いくつかの特異的検査法により、多くの場合は可能である。

アレルギー、アトピー、喘息の既往は見つけ出さなくてはならない。

しかし13例の調査ではたった3 例しかはっきりしたアトピーの既往があったに過ぎない。

これはアレルギーの素因は一般大衆と比べてこれらの疾患にとくに多いというわけでないことを示している。
詳しい職業歴および環境歴は当然のことながら化学物質暴露の評価に重要である。

産業衛生上のデーターがもし得られれば暴露の広がり方を証明するのに役立つこととなる。

しかしまた、明らかに現在の職業上暴露制限値内の低レベルでありながら、症状の再発があればその低濃度レベルでの暴露量で十分といわざるを得ない。
身体所見はとくに皮膚、頭、耳、眼、鼻、喉、呼吸器、消化器、神経系(詳しい精神状態の検索を含む)にとくに注意して所見をとる必要がある。

しかししばしばわれわれの例では身体所見は正常であることが多い。
しばしば病歴と身体所見はアレルギー疾患や古典的な職業病の可能性を除外するのに十分であることが多い。

特異的な症状の病歴や身体所見から、ヒスタミンやメタコリンによる気道チャレンジテストも一層の検素では必要になるかも知れない。

標準抗原抽出物の皮内テストは一般的な環境アレルゲンに対して予想される反応を確固たるものにするのに役立つかも知れないが、皮内反応陽性のみで職業または環境病の同定とはならない。

熟練した臨床神経精神科医による神経精神的検査は中枢神経症状の病歴のあるときや精神状態の検査で認知・運動障害を示唆する所見のあるときは患者の診断に有効である。