発症時の症状
発症と関連した最も一般的な症状は頭痛( 10例)、吐き気( 5例)、喉の痛みと脱力がそれぞれ4例であった。
発症に関与した化学物質:症状再発に関与した曇露物質はつぎの通りである。
有機炭化水素溶媒、新化学物質、燃焼産物、芳香剤、洗剤といったものを含んでいる。
既往歴: 4例は発症時あるいはそれ以前に甲状腺障害の既往があり、そのうち3例は甲状腺切除術を施行されていた。
2人が高血圧のため利尿剤で治療され、1人が喘息で、テオフィリンや気管支拡張剤の吸入を受けていた。
7人が床環境医を、4人がアレルギー専門医を受診し、多岐に渡る診断的検査、投薬、食事療法をされていた。
検査室検査:臨床検査の結果をretrospectiveにみたり、他の医師か最初に検査したものを後で参照したところ、標準的な結果は得られなかった。
記憶喪失、性格変化、注意散漫も認められた。
3例には計算困難、失空間識を伴う軽~中程度の短期記憶障害の形式を示していた。
2例には不安やパニック障害があった。1例は認識障害を伴わない抑欝があった。
これまでのまとめ
、・アレルギー"という言葉は1905年VonPirquによって創られ、普通の人では影響されないような環境要因に対し、異常な反応や応答性を示す状態を述べたものであり呼吸器、皮膚、消化器症状を起こすいわゆる"食物過敏症'はそれに引き続いて報告され、主として小児期に認められていた。
1931年、Albert Roweは特殊な食物による多臓器障害について詳しく記載した書物を出版した。
彼の患者はすべての年齢層にわたり、広範囲の呼吸器と神経症状を示していた。そして初期治療法としての消去食事療法を作りだした。
家族性非レアギン性食物アレルギーの概念はArthur Cocaによって1940年につくられた。
また、食物による多症候的障害の患者についても記載されたがおそらく非免疫学的機構によるとされていた。
特殊な食物のチャレンジに対する心血管系の反応の測定方法としてpulse testが作り出された。
原因食物のチャレンジテスト(負荷試験)の考え方は1950年Rinkelによってより精巧なものとされた。
roten tion diet (回転拡散食事法)はある食品を発症することなく食べられるようにすることを目的として考えられた。
Theron Randolphは食物アレルギーの考え方を環境的暴露に含めるよう広く取ることに大きく貢献した。
特異的適応の概念はRandolph(セロン・ランドルフ博士)によって食物あるいは環境化学物質常用症候群を記載する際に用いられ、食物と化学物質暴露に慢性的な異常適応を示す症候群に対し用いられた。
そして暴露物質の周期的な漸減、消去パターンで起因物質への再暴露においても症状の一時的な軽減をもたらすことができた。
Randolphのみるところでは医師の眼に最初にとまるのはこういった患者である。
慢性的なMCS症候群と特殊な化学物質暴露との明らかな因果関係をみるためRandolphはenvironmental con trolunitあるいはecologic unitを作り出した。
注意深く作り出された短期の居住施設で汚染あるいは合成化学物質がほとんどない環境で、人をすべての有害物から遠ざけることを目的としている。
人所数日後患者は起因食物、ガス、ゴム、プラスチック、合成物質その他症状を悪化させると報告されている物質に対し、チャレンジテストをされる。
負荷後の反応は症状の観察と患者の報告に基づき注意深い吟味の後、記録される。
Randolphは室内空気汚染と精神的症候群との関係、役割についても記載した。
炭化水素やその他の石油起因物質が主たる有害物質である。
最近大脳の過敏症について論評し、室内空気暴露物質に起因する"アレルギーの症例報告に関する書物が出版された。
米国臨床環境医学協会は1960年代中ごろ創設された。
広義の臨床環境医学は環境に対する個人の反応について研究するものである。
"アレルギー"は知られていない特殊な免疫メカニズムに基づく"特異反応"と考えられている。Randolphは最近臨床環境医学の歴史について要約をし、この主題の総括、批評を2冊の本にまとめた。
環境病の概念は工業化社会において潜在的な有害物質に対する特異反応を示す人を表すのに使われる。
思者支援団体が創られ、自助の指導がされるようになった。
一方、最近臨床環境医学とその患者評価法に関する論評がいくつか出た。
カリフォルニア医学協会の特殊任務を受けた団体が臨床環境医学者によって治療されてきた患者は必ずしも同一の認識可能な症候群ではなく、また行われた診断的検査が有効で正確でもなく、治療も有効であるといったノ、ツキリした証拠があるわけでないとまとめている。
また、Terrが16人の異なる臨床環境医学者によって環境病と診断された50人の患者について記載した。
病歴や化学物質への暴露は伝えられるところによると大変まちまちで、症候学的なパターーンは見つけられなかった。
50例中たった2例がその治療法で症状が改善されたことも報告されている。
このように反対の立場の医師もあることは事実である。
それはそれとしてMCSを理解するためには免疫中毒学についても理解しておく必要がある。
なぜなら、多種化学物質過敏症は極めて微量な化学物質に反応して発症するが、免疫中毒も微量な化学物質を媒体としているからである。