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農薬使わず花栽培 長沼の山田さん、10年かけ実現 /北海道
毎日新聞2015年12月2日 地方版
長沼町の農家、山田公さん(57)は化学肥料や農薬を全く使わずに観賞用の切り花を栽培している。
見た目の美しさが命の花は、薬を使った栽培が一般的。
自然栽培は全国的にも珍しく「アレルギーや化学物質過敏症の人でも安心できるものを」と試行錯誤を重ねて10年余で実現した。
栽培するのは主にトルコキキョウ。
ピンクベージュ色の「クラシカル」、薄紫色の「セレブオーキッド」と、7月〜11月末に40種類近くを育てる。
除草剤も使わず、山田さんは「土に力があれば草とも共存できる。人は環境を整えてやるだけ」と話す。
サラリーマンを経て、実家の農業を継いだのは約30年前。
当初は農薬も除草剤も使って花や野菜を栽培していたが、薬剤の散布や土の消毒を繰り返す中、「自然のバランスを崩しているのではないか」と疑問を持った。
さらに農薬散布後は体調が優れず、11年前に妻の皆子さん(55)と「本当に安全で安心なものを作ろう」と決め、勉強会や本で自然農法を学び始めた。
地元の稲わらのほか、裏山の土から採った土着菌で米ぬかや落ち葉を発酵させ有機肥料を作る。「土ができるまで5年かかった」と振り返る。
商品として必要な長さや輪数がそろい、安定した出荷ができるようになったのは最近だが、日持ちが良く、輸出もされている。
生産現場の環境認証を行う会社も「自然の力で栽培をコントロールした特異な取り組み」と驚くが、市場で特色をPRする仕組みはなく、価格には反映されない。
農家民宿も営み、全国の修学旅行生を受け入れてきた。
滋味深い食事と花のある食卓でもてなし「いつかうちがやっていることを思い出してもらえたら」と皆子さん。
山田さんも「薬や肥料がないと成り立たない農業ではなく、環境に負荷をかけない農業を若い人たちに伝えたい」と話している。