ホルモンを知る−「コルチゾール」の誤解【1】 | 化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 電磁波過敏症 シックスクール問題を中心としたブログです

http://mainichi.jp/premier/health/articles/20160729/med/00m/010/012000c
ストレスに反応するコルチゾールは敵か味方か
2016年8月1日
ホルモンを知る−「コルチゾール」の誤解【1】

 生命維持のため、体のさまざまな機能調節の役割を担うホルモン。

100種類以上あるホルモンのうち、ストレスから私たちを守る働きを持つのが「コルチゾール」です。

心理的、身体的ストレスの指標ともされるこのホルモンの知られざる特徴について、福岡大学の柳瀬敏彦教授(内分泌糖尿病内科)に聞きました。前後編で紹介します。

ストレスから体を守る大切なホルモン

コルチゾール分泌の模式図。

脳の視床下部(Hypothalamus)から出た副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)が、下垂体(Pituitary gland)を刺激、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の分泌を促す。

ACTHは副腎(Adrenal gland)を刺激、コルチゾール(Cortisol)の分泌を促進する



 私たちが不安や緊張などのストレスを感じると、脳の視床下部という部分からCRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)というホルモンが放出されます。

CRHは同じく脳にある下垂体から産出されるACTH(副腎皮質刺激ホルモン)の分泌を促進します。

血液中に放出されたACTHが副腎にたどり着くと、糖質コルチコイド、鉱質コルチコイド、アンドロゲンという3種類の副腎皮質ホルモンの合成と分泌を刺激します。

 「コルチゾール」は、糖質コルチコイドの1種です。

さまざまなストレスに反応して分泌されるため、アドレナリン、グルカゴン、成長ホルモンと共に「ストレスホルモン」とも呼ばれています。

 コルチゾールはストレスを感じた時だけに分泌されるわけではありません。起床の約3時間前から分泌が増え始め、起床時に分泌量がピークに達します。

その後、徐々に減少して、就寝前には非常に少なくなります。

このように、日中も一定量分泌されていますが、私たちが何らかのストレスを受けると、コルチゾールは分泌量を増やします。

その作用で血圧を上昇させ、ストレスという非常事態に対応するための「闘争」もしくは「逃避」に備えます。

つまり、ストレス時に分泌されるのは体がストレスをもたらす環境に適応するための反応なのです。

「ストレスホルモン」という呼び名で誤解されることも多いのですが、コルチゾールはストレスへの対処に不可欠な大切なホルモンなのです。

 コルチゾールには血圧上昇のほかにも、脂質やたんぱく質をエネルギーに変えたり、体内の炎症を抑制したりするなどの作用があります。

また、肝臓で蓄えられていたグリコーゲンを分解し、ブドウ糖にして血液中に放出し、血糖値を上昇させる働きもあります。コルチゾールはこのような作用を通じて日常的に、血圧や血糖値の低下状態を防ぐ体の危機管理をしているのです。

ステロイド剤を適切に使用すべき理由

 コルチゾールの分泌量は血液や尿から計測できます。

血中コルチゾールの基準値は4.0〜23.3µg/mL(午前8〜10時)で、平常時はだいたい15µg/dL未満です。

ストレスにより分泌量が増え、極度のストレス時には通常の10倍も分泌されることがあります。

重症のけがなどで集中治療室に入院した人の血中コルチゾール値を測ったところ、通常の2〜3倍の30〜40µg/dL程度にまで上昇していたという報告もあります。

精神的ストレスだけでなく、肉体的ストレスでも、コルチゾールの分泌が増えます。

 下垂体や副腎にできる腫瘍が原因で、副腎から大量のコルチゾールが産生される病気が「クッシング症候群」です。

顔が「ムーンフェース」と呼ばれる大きな丸い赤ら顔になり、手足は細くなります。

治療をしないでいると高血圧、糖尿病、骨粗しょう症を発症したり、悪化させたりする恐れがあります。

 みなさんは、「ステロイド」という薬を使ったことはありませんか。病気の治療でステロイド剤を長期に服用した場合には、クッシング症候群と同様の「ムーンフェース」などの症状が起こります。

ステロイド剤には、強い炎症やアレルギーを抑えるため、コルチゾール(糖質コルチコイド)の成分を化学合成したものが配合されています。

免疫反応を抑える作用があり、自己免疫疾患である膠原(こうげん)病の治療薬としても使用されています。

一方で、炎症を抑えるというのは、体の免疫力を抑えることです。

ステロイド剤を必要以上に長期使用すると免疫機能が落ちて体の抵抗力が弱まり、感染症を起こしやすくなることがあります。医師の指示に基づき、必要十分な効果を発揮する適切な使い方をすることが重要です。

 クッシング症候群の逆で、コルチゾールの産生が少なくなって起きるのが「副腎不全症」です。

全身の疲労感、胃部不快感や食欲不振などの消化器症状、関節痛、体重減少をはじめ、さまざまな症状が表れます。

その原因が副腎自体にあるものをアジソン病といい、2015年から難病に指定されました。アジソン病発症の2大原因は自己免疫と感染症です。

自分の副腎組織に免疫反応が起きて抗副腎抗体が産生され、それが副腎を攻撃してしまうのが前者。

後者は、副腎組織が広く感染症に侵され、本来のホルモン産生機能を発揮できなくなってしまうことにより発症します。

 症状として皮膚の色が黒くなることがあります。

アジソン病にかかっている人がインフルエンザなどの感染症にかかると、コルチゾールによって体を外敵から守るストレス反応が十分働かないため、生命の危機に直面する「急性副腎不全(副腎クリーゼ)」になることもあります。

副腎からコルチゾールが分泌されていないことが検査で分かった場合、コルチゾールと同成分のヒドロコルチゾン(製品名:コートリル)という薬を生涯、服用し続けなくてはいけません。

 コルチゾールが本来は私たちをストレスから守る“味方”であることが分かっていただけたと思います。