—線維筋痛症か身体表現性障害または心因性疼痛かー | 化学物質過敏症 runのブログ

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同一症状、同一患者が診療科により全く異なる診断、治療が行われている異常事態

—線維筋痛症か身体表現性障害または心因性疼痛かー

 

〒738-0060

広島県廿日市陽光台5丁目12番

廿日市記念病院リハビリテーション科

戸田克広

 

まとめ

 医学的に説明のできない痛みや諸症状を世界の慢性痛・リウマチ・ペインクリニックの業界は線維筋痛症あるいはその不完全型と診断し、精神科の業界は身体表現性障害と診断しています。

医学の異なる業界が同一症状、同一患者に対して異なる診断、異なる治療を行っている異常事態が起きています。

身体表現性障害と診断するより線維筋痛症あるいはその不完全型と診断する方がほぼ間違いなく治療成績がよくなるため、線維筋痛症あるいはその不完全型と診断することが望ましいと考えています。

身体表現性障害と診断することは誤りであることを説明しています。

精神科の業界の診断基準が2013年に大幅に変更され、身体表現性障害という病名がなくなる予定です。

 

医学的に説明のできない痛みや症状

 医学的に説明のできない痛み(medically unexplained pain: MUP)、あるいは医学的に説明のできない症状(medically unexplained symptom: MUS)がどのように診断されているかを皆様ご存知でしょうか。

実は医学的に説明のできない痛みや諸症状の診断は診療科によって全く異なっているのです。

 

身体表現性障害

 精神科では医学的に説明のできない痛みや諸症状は身体表現性障害(somatoform disorder)と診断されています。

身体表現性障害は心気症、転換性障害、身体化障害(somatization disorder)、疼痛性障害(pain disorder)、身体醜形障害、鑑別不能型身体表現性障害、特定不能の身体表現清祥外により構成されています。

より具体的に言えば医学的に説明のできない痛みや諸症状は身体表現性障害の中の身体化障害や疼痛性障害と診断されています。

具体的な診断基準は成書を参照していただきたいと思います。

概要を述べると、痛みやその他の多彩な症状(不定愁訴)を訴えるがそれを説明するに足る他覚所見がない場合に、身体化障害や疼痛性障害と診断されます。

他覚所見とは理学所見(腫れ、発赤、局所発熱など)、画像所見、血液所見、神経生理学的検査(神経伝導速度など)などの異常です。

精神科以外の診療科を身体科ということがあります。

医学的に説明のできない痛みや諸症状を訴える患者さんが身体科を受診した場合、診断が不能であり身体疾患ではないから精神科の疾患に違いないと言う仮説に基づき精神科に紹介されていました。

精神科を紹介されても少なくない患者さんは精神科を受診しません。

医療難民になってしまいます。精神科を受診した場合でも問題が起こります。精神的に問題がないから精神疾患ではないと診断されることがあります。

この場合、身体科からは精神科受診を勧められ、精神科からは身体科受診を勧められます。この場合にも医療難民になってしまいます。

身体表現性障害と診断される場合もあります。説明のできない痛みや諸症状は、多くの場合身体化障害や疼痛性障害の診断基準を満たしてしまうのです。

 

身体表現性障害という診断は誤り

 説明のできない痛みや諸症状を訴える患者さんが該当する疾患は通常は身体化障害や疼痛性障害です。

身体化障害や疼痛性障害にはそれなりに診断基準はあります。前述したように、身体表現性障害は心気症、転換性障害、身体化障害、疼痛

性障害、身体醜形障害などを含んでいます。

厳密に言えば、身体表現性障害には診断基準がありません。

例えば、身体醜形障害とは、おおざっぱに言えば、自分の身体は醜いのではないかと過剰に心配して社会生活に障害が起こる状態です。

そのような疾患を含んでいるため、当然といえば当然ですが、身体表現性障害には診断基準がないのです。

DSM-IVを記載した教科書には「身体表現性障害とは十分な医学的説明が見出せない身体症状(例えば、疼痛、吐き気、眩暈)からなる障害の一群である。」と記載されています[1]。

診断基準がない以上、身体表現性障害という診断は不適切です。

 北里大学精神科教授の宮岡等医師は「線維筋痛症症例の診察を精神科医に依頼したら身体表現性障害と診断されたという身体科の医師の話をしばしば耳にするが、これには問題がある。第

一に身体表現性障害というのはいくつかの疾患を含むカテゴリーの呼称であり、診断名ではない。

診断名として取り上げるのは誤用である。

第二に、もし身体表現性障害に含まれる疾患として診断するなら、持続性身体表現性疼痛障害や疼痛性障害である。」と述べています[2]。

なお、身体化障害や疼痛性障害は後述するDSMに記載されている病名ですが、世界標準の診断名であるICD-10ではやや異なる病名になっているため注意が必要です。ICD-10とは疾病及び関連保健問題の国際統計分類(International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems)の第10版です。

身体化障害はDSMとICD-10で同じなのですが、DSMの疼痛性障害はICD-10では持続性身体表現性疼痛障害に該当します。