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頭痛、鼻血、視力低下…ついにガン発症、携帯電磁波の過敏症一家に聞く「平穏に暮らせない」被害の数々
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22:17 08/11 2013
黒薮哲哉
パン職人の塩田永さん一家4人は、携帯基地局から発せられる電磁波によると思われる体調不良に悩まされ続け、携帯電磁波の「圏外」へ引っ越した。しかし、電磁波のシャワーを浴び続けていた家族のうち、奥さんの三枝子さんが昨年末、消化器系で癌を発症。
携帯電磁波は2011年、IARC(国際癌研究機関)により「2B」(発癌の可能性あり)に認定され、三枝子さんは複雑な思いに駆られている。
永さんは両眼の激痛や吐き気に悩まされ、長男の素也さんは鼻血、長女の実杜さんは著しい視力の低下を体験したが、「圏外」へ逃れた後は劇的に回復した。
見落とされがちな携帯電磁波による人体影響とは何なのか。
「圏外」の消滅を狙う政府のIT戦略に、問題はないのか。
長野県の山中にある塩田家を訪れ、4人に胸の内を語ってもらった。
筆者は塩田三枝子(55才)さんが、ますます増え続ける携帯基地局と電磁波についてなげいている、という話を共通の友人から聞いていた。
三枝子さんは癌になった原因の一つとして、電磁波の影響を疑っている。
しかし、電磁波の発信源であるNTTドコモの企業コンプライアンスを問うにしても、癌の公表はプライバシーの問題をはらむため、癌の具体的な種類は伏せる。
ドコモの携帯基地局から発せられる高周波電磁波に起因しているという確たる証拠はない。
基地局の電磁波をシャワーのように浴び続けた事実を重く見て、それが発癌の原因である可能性を疑っているに過ぎない。
とはいえ、電磁波が人体に与えるさまざまな影響が、かなり以前から指摘されてきたことも事実だ。
たとえば癌との関係について言えば、イスラエルやドイツで行われた疫学調査で、携帯基地局の周辺で癌の発症率が高いという結果が報告されている(後半で詳述)。
また、WHOの傘下にあるIARC(国際癌研究機関)も、2011年、携帯電磁波の発癌性の可能性を認定した。
癌とは別に、携帯基地局の周辺に住む住民の間に、耳鳴りや不眠をはじめ不可解な症状が次々と出現している事実もある。
三枝子さんも、基地局の電磁波が原因と思われる体の不調に悩まされてきた。
こうした状況の下で、癌を発症して手術を受けたことは、電磁波による健康被害という不認知の問題を、ふたたび訴える動機となったようだ。
三枝子さんが言う。
「電磁波の影響で体調が悪くなっても理解されることは難しく『気力ではね返せ』とか『ズクなし(方言で怠け者)』と言われたこともあります。
医師から癌を告知され、病院のベッドに横になれた時、安堵感に包まれました。
誰にも気兼ねせず休むことができるんですから。
同じ電磁波の被害者から『いっそ癌にでもなりたい』という言葉を聞いたことがあります。
気のせいと決めつけられ理解されないことはそれほど苦しいことなのです。
ですから自分の癌を公表することに抵抗はありません。
長年にわたって電磁波に曝された事実と癌を発症した事実を、ひとりでも多くの人に知ってもらい、参考にしてほしいです」
そこで筆者は東京から長野へ向かったのである。
◇電磁波による人体影響
電磁波過敏症という「病気」がある。
とはいえ、患者さんの中には電磁波に曝されると体が「過敏」に反応するのではなく、一滴のインキが水中でじわじわと拡散するように、「鈍感」に反応し、その後、顕著な症状を呈する人も少なからずいる。
それゆえに、「電磁波過敏症」という言葉が、病気の特徴を正しく現しているかどうかは議論の余地がある。
しかし、本稿では便宜上の理由で一般に使われている「電磁波過敏症」という言葉を採用する。
塗料や合成建材などに使われている化学物質に体が反応する病気-「化学物質過敏症」は、比較的よく知られているが、電磁波に体が反応する電磁波過敏症は、いまだに市民権を得ていない。
そのためにこの病気になって病院へ行っても、診断書に電磁波過敏症という病名は記されない。
所見どまりである(精神科では、電磁波過敏症をうつ病や統合失調症の症状として診断書を出す病院もあるようだ)。