ラスト:電波ばく露による生物学的影響に関する評価試験及び調査 | 化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 電磁波過敏症 シックスクール問題を中心としたブログです


5.むすび
電波ばく露の人体に対する全身平均SARの周波数特性を把握するには、大規模数値計算に頼らざるを得ない。

それ故にSAR計算結果は、人体数値モデルや境界条件を含む計算アルゴリズムの種類・精度に応じて大きく変わることが懸念されていた。

特にFDTD解析空間内に生体が存在する場合には、散乱界に対するPMLの振る舞いが解析空間のサイズで異なる可能性があり、生体内SAR計算に何らかの影響を及ぼす恐れがある。
本調査では、まず理論値の得られる球モデルを用いてMieの理論値と比較することにより、解析空間の必要なサイズを検討した。

その結果、共振周波数によらず、解析対象から吸収境界面までの距離を数十セル以上確保すべきことを導いた。

つぎに、NRPBの開発になる解剖学的人体数値モデルに対して、上述した吸収境界条件の下で全身平均SARを計算し、NRPB所属のDimbylowによる計算結果との比較検証を行った。

その結果、全身平均SARは、共振周波数帯ではDimbylowのそれと偶然にもよく一致したが、GHz帯では彼の結果よりも10%以上も超えることがわかった。更に、ICNIRP参考レベルの遠方界ばく露で生ずる人体全身平均SARは、共振周波数帯とGHz帯とでピークとなる双峰型の周波数特性を示すことが知られてはいたが、それらの吸収機構は十分に明らかにされていなかった。

本調査で解剖学的人体数値モデルと体型寸法を参考に作成した直方体モデルでの全身平均SARを計算し、得られた結果を比較することで吸収機構の相違を考察した。

その結果、全身平均SARは共振周波数帯ではモデル形状よりも電気定数に依存し、GHz帯ではモデル表面積に大きく左右されることが判明した。

最後に、NORMANモデルを等比率で縮減して作成した10歳と5歳の小児モデルに対して全身平均SARを計算した結果、共振周波数帯では基本制限の0.4W/kgを下回ったが、GHz帯では23%程度超えることを示した。

特に、小児についても直方体モデルの計算結果と比較したところ、成人モデルと同様の傾向が得られたことから、小児も成人と同じ吸収機構であることが確認できた。
今後の調査課題としては、更なるデータの蓄積とピーク予測の高精度化および得られた結果の実験的検証を行いながら、種種の体型・サイズの数値人体モデルとばく露状況においてGHz帯での全身平均SARがICNIRPの基本制限並びにわが国の管理指針レベルに対する基礎指針をどの程度超えるかの解明が挙げられる。

参考文献
[1] O.P. Gandhi, “State of the knowledge for electromagnetic absorbed dose in
man and animals,” Proc. IEEE, vol.68, no.1, pp.24-32, Jan. 1980.
[2] P.J. Dimbylow, “Fine resolution calculations of SAR in the human body for
frequencies up to 3 GHz”, Phys. Med. Biol., vol.47, pp2835-2846, 2002.
[3] International Commission on Non-Ionizing Radiation Protection, “Guidelinesfor limiting exposure to time-varying electric, magnetic, and electromagneticfields (up to 300 GHz),” Health Phys., vol.74, no.4, pp.494-522, April 1998.
[4] 郵政省電気通信技術審議会答申,諮問第89 号,電波利用における人体防護のあり
方,1997.
[5] C.H. Durney, “Electromagnetic dosimetry for models of humans and animals:A review of theoretical and numerical techniques,” Proc. IEEE, vol.68,pp.33-40, 1980.
[6] J. A. Stratton, ed., Electromagnetic Theory (McGraw-Hill, New York), 1941.
[7] Du Bois, Arch Int Med 17:863, 1916.
[8] 鈴木隆生,“日本人のからだ 健康・身体データ集”,1996.
[9] C. Gabriel, “Compilation of the dielectric properties of body tissues at RF andmicrowave frequencies,” Brooks Air Force Technical Report AL/OE-TR-1996-0037, 1996.
[10] Du Bois, Arch Int Med 17:863, 1916.


runより:長い記事にお付き合い頂き有難う御座います((。´・ω・)。´_ _))ペコ

実はこんなのがまだまだあるんですよ(´_`。)

このPDFは322ページで今持っているPDFでは最も長い物です。

画像扱いの物はどうしよう(;´・ω・)