5. 試験方法
5.1 全実験期間: 14日間
5.2 実験計画
妊娠動物を、妊娠7日から17日の間午前中に1回、「㈱DIMS医科学研究所試験番号0302 経胎盤的N-ethyl-N-nitrosourea誘発中枢神経系腫瘍発生に対する2GHz帯電磁波ばく露の修飾作用:長期電磁波照射」において使用した保定器に入れ、電磁波ばく露箱(10番)に暗条件下でセットし1日1.5時間拘束した。
また、対照群として保定器に入れない群も設けた。なお、保定器に慣れさせる目的で全匹に、入荷直後から実験開始日までケージ内に保定器(5号)を入れておいた。
6. 検査項目
6.1 一般状態
母動物:毎日2回午前と午後に症状観察を実施した。
6.2 体重測定
母動物:実験開始日(妊娠7日、実験1日目)に測定し、その後は実験期間中毎日測定した。さらに剖検時にも体重(最終体重)を測定した。
6.3 病理学的検査
1) 肉眼的病理学検査
妊娠20日にエーテル麻酔下で帝王切開後、腹部大動脈より採血し安楽死させ、全身諸器官の肉眼的観察を行った。
さらに、母動物および胎児について以下の項目を調べた。
妊娠黄体数(排卵数)、着床痕数、胎盤重量、胚・胎児死亡数(早期およ
び後期吸収胚)、生存胎児数、生存胎児性比、生存胎児体重、生存胎児外
表観察(口腔内を含む)
7. 統計処理
各検査項目について、対照群と各投与群との間の統計学的な有意差検定を行い、危険率5%(P<0.05)または1%(P<0.01)のレベルで判定した。
統計学的解析は、平均値の差の検定はstudentのt検定(片側)を用いて行った。
Ⅳ 試験結果
1. 母動物
1.1 一般状態(TABLE 1)
拘束による一般状態の変化を認めなかった。
1.2 体重変化(FIGURE 1、TABLE 2)
体重については、保定開始翌日(妊娠8日)には対照群と比較して10g程度の低値を認め、保定期間中同程度の低値を示した。保定期間終了2日後には対照群と同程度にまで回復した。
1.3 肉眼的病理学検査(TABLE 3)
母動物にはいずれの動物においても異常を認めなかった。
2. 胎児
2.1 子宮内検査(TABLE 3)
妊娠20日の母動物を屠殺し子宮内の状態を調べた結果、妊娠黄体数(排卵数)および着床痕数ともに拘束による低値を認めなかった。
胚・胎児死亡数については早期吸収胚を対照群および保定群の母動物各1例(動物番号:0511004、0511007)に認めたが、後期吸収胚および死亡胎児については認めなかった。
生存胎児数についても拘束による低値を認めず、生存胎児性比、生存胎児体重および胎盤重量にも拘束による影響を認めなかった。
さらに、生存胎児外表観察においても異常を認めなかった。
Ⅴ 考察
「9.2 妊娠ラットの生殖機能(妊娠維持)および胚・胎児発生による2GHz帯電磁波ばく露の修飾作用」実験の予備検討として、妊娠動物を妊娠7日から17日まで保定器に入れ、その拘束ストレスによる胎児の発生に及ぼす影響について検討した。
母動物には、拘束による一般状態への影響を認めなかったが、体重においては保定期間中、対照群と比較して約10g程度の増加抑制を認め、拘束による影響と判断された。
なお、体重は保定期間終了2日後には対照群と同程度に回復した。
妊娠20日に母動物を帝王切開して子宮内の状態を調べた結果、胚・胎児の死亡については早期吸収胚を保定群の母動物1例に認めたが、対照群にも1例に認めており、さらに、本系統のラットでは数パーセントの頻度で発生することが報告されている[1]ことから、自然発生性のものであると考えられた。
その他のいずれの検査においても拘束による影響を認めなかった。
以上の結果より、保定器による拘束ストレスによって、母動物の体重増加は軽度抑制されたものの、胎児の発生には影響しないことが示された。